6.気まずさ
四月も終わり長袖だと汗ばむ気候になってきた。川沿いの遊歩道にあるベンチの上を見ると藤の花が一面に咲いているのが目に入る。温暖な気候なためか散歩している人も多く、その分ベンチで休む人も多かった。
ただしそれは大人の場合。子供はゴールデンウィークの遊ぶ予定を話し合っている。
「ゴールデンウィークどうするの?」
「明日から二日間は家族で旅行行くけど、他は特に予定ないわね」
「旅行か。どこ行くの?」
「草津行くって」
「いいなあ。こっちは何も決まってないよ。サッカーもあるし、どこへも行けなそう」
「ふふーん、いいでしょ。話は聞かせてあげるわ」
「あてつけかよ」
「ええ、もちろん」
にっこりとした笑み。浩太をからかう時はいつもこんな表情だ。普段は流す浩太だが、今日は刺さったようだ。ゴールデンウィークにどこへも行けないと言うのはつらかったのだ。
莉奈はしばらくにこやかであったが、浩太が本気で落ち込んでいる様子を見て、どう声をかければいいのか悩んでいるようだった。
「あ、あのさ。おみやげは買ってくるわ」
「ああ、うん。だいじょうぶだよ。ありがとう」
どうしたらいいのだろう。返事は妙に落ち着いていたが、感情を押さえ込んで無理しているような気配があった。
その後はお互いに口を開かないまま、分かれ道まで辿り着いてしまった。
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