11月。

 10月末の寒さが和らいだ、小春日和。

 抜けるような青空と、黄色のコントラスト。

 校庭には、銀杏の葉っぱが落ちて、絨毯のようになっている。


「このタイミングで掃除をさせられたら、と思うとゾッとするな。」

 と俺が言う。

 あ、なんてロマンのない男なんだ、って思われるかな?

「あははー、本当だよねー!」

 屈託のない笑顔でそう返してくれた。 


 昼休み。

 俺はベンチに座って、水野さん……美佳ちゃんとお弁当を食べている。


 あの不良たちから救ったのは、きっかけに過ぎなかった。

 それから、俺と美佳ちゃんは、スクールカーストの壁を越えて話をするようになった。わかってきたのは、美佳ちゃんの趣味が、意外と俺のオタク趣味と一致してたこと。

 彼女も、学校内のアイドルというイメージに縛られていて、そういう趣味を話したくても話せなかったようだ。

「祐くんが勇気を出して私を助けてくれたから……私も勇気出してみよっかな」

 なんて言いながら。


 そして、俺らが鉄板で盛り上がれる話がもう一つ。

 お菓子の話。

 美佳ちゃんはお菓子が大好きで、どのお菓子がいいとか、ダメとかとにかく熱く語る。

 だから、俺は美佳ちゃんに、一つ嘘をついている。


 お弁当を食べ終わって、お菓子の時間。

 俺は、≪なめこの丘≫を取り出した。

「さ、食べよう、俺らの大好きな≪なめこの丘≫、石突のカリっとした部分、たまんねぇよなー」

 そう、美佳ちゃんは熱烈な≪なめこ≫派だった。だから、俺は≪わかたけ≫派であることを封印していた。

 ところが、

「祐くん、ウソはだめだぞっ」

 え?

「私、見てたよ。この前≪わかたけの村≫食べてたの」

 そう、次の日食べ残しをアイツにあげた時のことだった。

「そんな前から……」

「だから、明日からはこうしよ。祐くんは≪なめこの丘≫をまた買ってきて。私は≪わかたけの村≫を買ってくるから。で、交換して、お互いのいい点をプレゼンしあうの。相手の悪い点をののしるはだめだからね」


 そんな俺らを見て、周りから声がひそひそ聞こえてくる。


「……ありえない、何かの間違いではないか」

「スクールカースト最底辺の陰キャと、学校一のアイドルのカップル……だと?」

「……運命のいたずら、ここに極まれりだ」


 残念。お化けのいたずらです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Trick "and" Treat @hoge1e3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ