29 満たされた心



 帰る時に、兵士達につけられていたらしい。


 ダンジョンの奥で探検家の少女に事情を話していたら、大勢の兵士達が乗り込んできた。


 私は探検家の少女と赤子を逃がすために囮になった。


 誰かのために、命を張るなんて馬鹿げている。


 暗殺者として生きていたころは、自分の為だけに生きていた。


 けれど今はそうじゃない。


 私は、おかしな王子との出会いをきっかけにして、変わっていた。


 何もかもが間違いだらけの思い出の中で、何かが芽生えたのかもしれない。


 昔よりもずっと心が満たされていた。


 兵士達に囲まれた私は、探検家の少女と赤子を逃がした後に死んだ。


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