28 坂道の終点



 とうとう一番前に出てきた。


 首から血を流す竜と目が合った。


 竜は目を細めた。


 表情は変わらなかったけれど、微笑んだような気がした。


 間近でみた竜は、遠くで見たよりもずっとボロボロだった。


 とても翼をひろげて空を飛べるような状態ではなかった。


 竜は力尽きようとしていた。


 私がかけよろうとすると、兵士達にとめられた。


 竜は、人間の姿に戻って、集まった人々に向けて声を張り上げた。


 我は邪悪な竜なり。


 世界を人々を滅ぼすもの。


 矮小な人間どもに傷つけられし身でも、この場にいる者達を瞬殺する力は残っている。


 死にたくなければ、この場から去るがよい。


 王子は再び竜になった。


 そして、雄たけびをあげ、暴れまわった。


 その様子をみた人々も兵士も、みな一目散に逃げていった。


 残された私は、倒れた竜の王子の傍にかけよった。


 王子は人間になった。


「君といられて幸せだった」


 王子はいくつかの言葉を言い残した。


 全てを聞き終えた後、「今、楽にしてやる」私はナイフを握った。


 私は暗殺者の役目を果たすために、自らの手で王子を殺した。


 私は王子の死に嘆き悲しんだ。


 すると、私の体が見る間に代わっていって、竜に変貌した。


 竜になった私はたった一人で、ダンジョンに帰った。


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