21 便利な乗り物



 近くの町に寄っていくと、夫婦扱いされた。


 禁断の恋に思い悩む貴族と召使、なんて話でご近所の者達が盛り上がってしまった。


 おそらく探検家の少女の説明のせいだろう。


 否定する必要性はないのに、なぜか恥ずかしくなった。


 きれかけてきた食料と日用品を補充した帰りは、空から帰った。


 竜になった王子は、かなり早いスピードで飛べる事がわかった。


 そのおかげで凍えかけたが。


「さっ、寒いっ。もうちょっとゆっくり飛んでくれ!」

「あれ? 天国のおばあちゃんが手を振ってます」

「凍死する!」


 なんだか最近、恐ろしかったはずの竜が、ただの便利な乗り物のように思えてくる。


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