14 くつろぐ王子サマ、くつろげない私



 ダンジョンの最奥。


 一度私を置いて出ていった王子は、どこかに隠してあったらしい荷物を運びこんでくる。


 そして、来てから半日後。

 ダンジョン内に完璧な居住空間が出来上がった。


 家具や食べ物、暇つぶしの道具なども完備。


 ここに人が住めることは間違いない、とばかりの準備万端っぷりだった。


「さあ、ここならだれにも邪魔されないでゆっくりできるね」


 王子はもうすでに私室でくつろぐような顔でいる。


 反対に私は、絞首台にひったてられた死刑囚のような気分だ。


 部屋の環境を整えたあと、にこりと笑いながら近づいてきた王子は「僕達の将来について相談しよう」と言い出した。


 嫌な予感しかしなかった。


 私は回れ右をする。


 そして、扉に向かってダッシュした。


 ずっと嫌な予感しすぎてて壊れたかとさえ思っていたのだが、改めて今嫌な予感がしている。その大きさは最大級だ。


 住んでいた町を特大の嵐が襲ってきた時以来だ。それは、生存本能に直接語り掛けてくるような危機感だった。


 こんなおかしな人間の女になるくらいなら、一パーセントの可能性(そんなにあるのか知らないけど)にかけてダンジョン脱出を目指して方がマシだった。


 というわけで、不思議そうな顔をする王子を残して、私は部屋から逃げ出した。


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