13 状況詰んだ



 無理だった。


 隙を見つける前に、(王子にとっての)安全な場所に連れていかれてしまった。


「ここに来ればもう安心だ。誰も僕達の仲を引き裂くことはできないよ」


 行先はダンジョンだった。


 なぜだ。


 私を連れてダンジョンに行った王子に戸惑うしかない。


 深い山の中に隠されたダンジョンだったが、まったく道に迷いもしなかった。


 王子は、勝手知ったるという風にダンジョンの中を歩いていって、その最奥にいた守護者っぽいドラゴンを「ちょっと邪魔だな」と討伐したあと、ドラゴンが守っていた秘宝と一緒に私を軟禁してしまった。


 ここにいたるまでわずか一時間である。


 王子の強さがおかしい。行動力もおかしい。


 暗殺者をかるがるに超える強さ。

 それは王子が竜の姿になる事と関係しているのかもしれない。


 歴史学者でもない自分にはどうでもよい事だが。


 ダンジョンの中の様子は、モンスターがはびこっていた。


 ここは、全100層からなる高難度ダンジョン。

 のはずだ。


 しかし、「これじゃ、二人っきりになれないじゃないか」と、モンスターを適度に駆逐しながら、ここをわずか一時間で踏破。


 王子は地図を確認するそぶりも、途中で休憩するそぶりもみせなかった。


 人外じみた強さを持つ王子と、真正面から事を構えるのはやはり得策ではない、と私はそう判断した。


 数百の矢が出てきたり、大岩が転がってきたりするダンジョン内を闊歩する王子は、竜というよりはおとぎ話で悪さをするような魔王のようだった。


 ここからただの暗殺者でしかない自分が逃げるのは不可能に近い。


 満足に構造を把握してない自分が出て言ったら、死あるのみだった。


 状況は詰んでいた。


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