12 王子サマの天敵になる奴がいない



 しかし、それでも周囲の人間は頑張った。


 表立って王子を非難できないとなったら、今度は裏から暗殺しようという計画が持ち上がったらしい。


 毎晩王子の私室に、暗殺者が放り込まれてくる。


 近くで控えている使用人達も、もはや仕事しなくなった。


 暗殺者が暴れていても見て見ぬふりだ。


 しかしそれでも、王子の方が強かった。


 簡単に「邪魔しないでくれるかな」「僕と妻との幸せなひと時を」と言って、部屋に放り込まれてきた暗殺者をノシてしまう。


 たまに竜になったりして、暗殺者を撃退していた。


 本気で思った。


 王子はおそらく生まれる世界を間違えた。


 しかし、毎晩奇襲されるのはさすがに辟易したらしい。


「考えてみれば、王子でいるのは君と一緒になるための必須条件じゃなかったね。うん、ここを出よう」


 というわけで、そんな思い付きのような言葉で、王子と私は王城から脱出することになった。


 もはや王子でもなんでもなくなるというわけだ。


 だが、それならそれで好都合。


 王子の意をくんでくれる使用人(最近は少なくなってきたが)がいないなら、さすがに隙ができるはず。


 好機をうかがって、王子の元から逃げよう。

 と、そう思っていた。

 その時は。


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