04 王子サマが竜だった
そういうわけなので、私は王子を暗殺しにいった。
王城に忍び込んで、見張りの視線をかいくぐり慎重に進んでいく。
前もって調査しておいた城内の地図を確認しながら、ゆっくり確実に。
仕事に善悪は関係ないが、大小は関係ある。
難易度の高い大きな仕事では、細心の注意をはらって行動した。
城の中にある厳重な場所を探し歩いて、一時間ほど。
王子の寝所を見つけた。
私は、音もなく部屋に忍び込んで短剣を、つきつける。
「王子サマだって、人間なんだもんな」
どんなに偉い人間でも、鍛えた人間でも急所は変わらない。
首をかききってしまえば、心臓を突いてしまえば、それで終わり。
だから私は、ベッドに横たわる王子の首に、持っていた短剣を振り下ろそうとした。
しかし。
「君を待っていたよ。僕の妻となる君を」
王子が飛び起きて、私を組み伏せた。
不意を突かれた私は、呆然とする。
私を待ち受けていたのは、場違いな笑顔を浮かべた王子だった。
あれよあれよという間に制圧されてしまった私は、王子様に手錠をかけられてしまう。
依頼は失敗。
ならこれで、組織の人間としては終わり。
そう考えた私の耳に王子の言葉がとびこんできた。
「君のような人に会えるのを楽しみに待っていたんだ」
かけられたのは、陶酔した響きの声音だ。
その瞬間、かつて感じたことのない悪寒が、体に走った。
「子供は何人が良いかな? 赤い屋根の家に住みたいね。ペットは犬派? それとも猫派? 婚姻届けはもう書いておいたよ」
言葉の内容にもそうだったが、それどころではない。変化が起きた。
王子の姿が変貌していく。
人の形をしたシルエットは見る間に変わっていって、落ち着いたのは竜の姿だった。
おとぎ話の中にしか存在しない。空想上の生き物だ。
竜が「るるる」とのどをならして、アギトを開いた。
私には刺激が強すぎたようだ。
意識が落ちる。
気を失ってしまった。
この王子はどうやら普通の人間ではないようだった。
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