02 暗殺者



 私は一人の女であるが、暗殺者だ。


 通りを行きかう普通の女のように、恋におしゃれに生きるという事はしない。


 生まれてきてからこれまで、ただ生きる事だけを考えてきた。


 親はいない。

 私をゴミ山に産み落としてそのまま、どこかへ消えたからだ。


 なら、幼い子供が今までどうやって生きてきたのかと思うが、覚えていないので分からない。

 子をなくして気がふれた女の世話になった気がするし、変人の愛玩動物として気を引く生活をおくっていたかもしれない。


 しかしそいつらは、何かのはずみで暴漢に襲われて殴り殺されたり、恨みを買った人間からナイフで刺されたりした。


 その後私は、孤児として町の路地裏で生きていた。


 毎日が、食べるものも着るものも奪い合い。その日を生き延びるのでやっとだった。


 けれど状況は一変する。


 暗殺の技術があったので、闇組織に拾われたのだ。


 盗みを働く時に、気配を消すのがうまかったから。

 おそらく、そこに目をつけられたのだろう。


 私が十を過ぎた頃だ。


 それからは、組織の者達に育てられた。


 まっとうな職に就く事なんて、考えもしなかった。


 やろうと思っても不可能だ。


 真面目に生きていれば、いつか報われる?


 努力をしていれば、夢は叶う?


 それは普通の人間に対する話だ。


 孤児にそんなチャンスはない。


 幼く弱かった私、小汚い浮浪児だった私に手を伸ばしてくれる人など、誰もいなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る