第2話

夕暮れ時、

私は今日もいつものように帰路につく。

相変わらず、一人だ。

前には、三人ほどの女子高生とその前に男子高生。

後ろにも楽しそうにおしゃべりをしながら、家に帰ろうとしている高校生たち。その中で私だけが一人ぽつんと歩いている。

車が通り過ぎていく、目の前の太陽が赤くあたりを薄暗く照らし続けている。

昨日はあれは何だったのだろう。駅にたどり着いた時にみた黒い影。人間の形をしていたけれど、あるべきものが一切ない。けれど、のっぺらぼうとも違う。存在自体があるようでない存在。

そんな感じだった。

そういえば、クラスの子たちがこんな話をしていた。

「知っとる?○〇橋の近くの横断歩道で事故があったじゃん」

「あっ、うちの生徒が死んだんだっけ?」

「出るらしいよ」

「マジで?」

「何人か目撃情報があるという話よ」

 幽霊?

 死んだ生徒の霊がいて、私を追いかけてきたというのだろうか。

 どうして?

 どうして私が追いかけられないといけないだろう。周りにはたくさんの生徒がいる。それなのに私だけを追いかけた。

私がなにかした?


まったく覚えがない。


 そんなことを考えているとまた足音がしてくる。

 私と同じ速度で歩く足音。

 また来た。

 どうして、私に付きまとうの?


 私は勇気をもって振り返った。

 けれど、だれもいない。

 遠くで女の子たちの笑い声が聞こえるだけだ。

 私は、気のせいだと言い聞かせて歩き出した。

 そして、いつもの横断歩道にたどり着く。信号が赤を示していたから足を止める。

 すると、再び足音が聞こえてきた。

 そして、足音は私の隣で止まる。

 他の生徒たちだろうか。いや違う。他の生徒たちは話をしながら、私の背後を通り抜けていくだけだ。この横断歩道を使うのは私ぐらいのはずだ。

だからあり得ない。

横断歩道が青に変わる。

私は駆け出し、そのまま橋へと登る。

やっぱり、足音がついてきた。

私は思いっきり振り返る。

まだいる。

黒い影が揺れている。

「どうしてついてくるのよ。ついてこないで」

私は叫んだ。

そして、駅へと向かって走り出す。

またいつもの階段わ登る。振り返ると、やっぱり、黒い影が佇んでいる。

登ろうとはせずにじっと私を見ていた。

「どうして?」

登ってこないの?

私はそう続けそうになった。

すると、黒い影が首を振る。

「また間に合わなかったか・・・・・・」

私の耳にそんなつぶやきが聞こえた。

口も鼻もなにもないのに、確かに黒い影が発したと思った。

「なにが?なにが間に合わなかったの?」

私が尋ねるが、それは答えなかった。

なにも答えずにどこかへといつてしまった。

私は、そのままへばりこんでしまった。

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