夕暮れ時、いつもの帰り道、後ろの影法師
野林緑里
第1話
もうすぐ冬が訪れようとする時期。
空気は冷たくて、日がくれるのも早くなっていた。
私は学校が終わるといつものように帰路につく。
学校の校門を抜けて、民家を少し抜けたらすぐに国道に出た。
帰宅ラッシュの時間のために車はそこそこ通っていく。
私は山のほうへと半分沈みかかっている夕陽に向かって歩いていた。
他にも帰っていく生徒の姿もあったが、私よりもずいぶん前か後ろを歩いているのが見えるだけで、私の歩く空間には私以外誰もいない。
いつものことだ。いつものように一人で学校へ行き、一人で授業を受け、休み時間も一人ですごす。誰も私に話しかけるものもいなければ、私が話をすることもない。
そんな時間をずっと過ごしてきた。
特に寂しくはない。もう慣れている。ずっとそうやって繰り返していれば、嫌でもなれる。いや慣れるしかないのだ。
私の存在に気づいてもらおうとは思わない。努力する来もないのは、もうすっかりあきらめてしまっているからだ、
いつものように他の人との距離を取りながら、いつもの帰り道を歩く。
日が沈んでいく。
辺りが暗くなり、足元さえも見えなくなっていく。
そんな中、不意に足音が気づく。
私のすぐ後ろ。
常に人と距離を取り続けていて、私のそばにだれかがいるはずがないのに、確かにいる。足音が私のすぐ後ろ。
私は背筋が凍った。
私の足取りが自然と早くなる。
私の歩く速度が多くなるとともに、背後の足音も早くなる。
私が走り出す。
すると、背後の足音も走る音へと変わる。
私は走る。
前方を歩いていた生徒たちを追い抜いていき、いつもの駅に向かって走っていった。
国道の横断歩道をわたり、歩行者専用の橋をかけていく。
それでも足音が背後に聞こえる。
どうして、追いかけてくるのだろう。
振り向いて、問いただそうかとも思ったが、怖くて振り向くことができない。
とにかく駅にいかないと。
もうすぐ電車が来る。
早く、
目の前にはいつも使う無人駅が見えてくる。
まだ電車は来ていない。
私はホームに繋がる階段を駆け登った。すると、足音が聞こえなくなった。
私は大きく深呼吸をして、ようやく振り返った。
すると、階段の下に人影があった。
いや人の形をした黒い霧のようなものがたたずんでいた。
目も鼻も口もない。
服を来ているかもわからない。
ただ黒い人間がゆらゆらと揺れている。
階段の下にたたずんだまま、私を見ている。
「きゅああああああ」
私は悲鳴をあげた。
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