第6話 命のそんな危機!?
☆☆☆その①☆☆☆
呆気にとられる二人に、ダールマさんは顔を真っ赤にさせる程に、必死な説明をする。
「元々の性誘発成分が過度に影響を及ぼし、少年たちの肉体までをも鋼鉄のように変質をさせ、空腹の獣の如き運動能力と体力と、絶滅危惧種な野獣の如き繁殖欲求で理性を失い、やがて肉体と脳に負荷がかかって死に至るという、それは恐ろしい症状なのですっ!」
やがて死に至る部分はかなりすっ飛ばしてる感じもするけど、症状の進行そのものは、仰る通りらしい。
「淫獣化の症状は少しずつ表面化してきますが、その症状を一時的とはいえ何よりも早く確実に抑え込む事が出来るのは、どんな薬でもなく、女性の裸なのですっ!」
「「………」」
まったく笑えないジョークかと疑ってはみたものの、ダールマさんの目に嘘はないし、資料も見せてくれた。
「二百年ほど前にも、類似した薬物で発症した地球本星の旅行客がいらしたようです。その時の、全ての資料です」
「は、拝見します…」
何度も読み返したけれど、ダールマさんの説明通りだ。
「超空間通信で連絡をしても、地球の緊急シャトルでは往復で四日以上もかかってしまいますし、我々の船では地球まで五日以上もかかってしまいます」
行政長官の説明に、ユキが冷静に疑問を投げかける。
「ワープを使用されれば、一日で到着できるのでは?」
と問うたものの、記録によると、ワープの際の特殊フィールドの電磁帯が何らかの影響を及ぼして、症状を著しく悪化させてしまうらしい。
「男性捜査官や男性の医師では、もし症状が現れた時に、宇宙船内では対応のしようがありません。仮に正当防衛として銃撃するにしても、宇宙船内用に出力を絞ったハンドガンでは、全く歯が立ちません」
「つまり…」
万が一とはいえ、搬送中に彼らの症状が現れた場合、マコトとユキが裸になって対応するしかない。という事だ。
悩める表情も、王子様のアンニュイな空気の、ちょっと頭が痛いマコト。
「あの…性を喚起する症状でしたら、むしろ女性の裸は逆効果なのでは…?」
当然の疑問に、ダールマさんは、大真面目な顔で答える。
「いやいや。そこが、男性心理の不思議と言いますか。男性というのは、意外と女性に対して臆病でしてな。ここランドホーリーでも稀にですが、女性のお客様が男性の浴場に入られてしまう事故が ありまして。その場合、ほぼ確実に…人数の多い男性のお客様たちが、慌てて退室をされております」
「はぁ…」
「男性心理の奥底には、女性を護りたいという本能があります。本質的には、男性は女性に逆らえない生き物なのです」
大抵の犯罪者は男性だから、二人には何だか信じられない感じだ。
「かくいう私もっ、女房が怖くて怖くて…しかしそれでも、銀河に女房以上の女性はいないと、確信しております。ガッハッハッハ! いや失礼」
笑うと負けよは都市伝説だと証明された。
「…そうですか」
それはともかく、ダールマさんは良い方なんだな。と、マコトとユキは素直に感じた。
☆☆☆その②☆☆☆
地球から、通常航行の最大船速で三日の距離。というと、とても近くに感じられる。
太古の二十世紀ごろの物理学では、光の速さが宇宙の速度の基準であったので、その頃の物理学で言うと、光速で三日は太陽系からも出られない超々単距離だ。
相対性理論からの大統一論などが確立された後に、光速にも時間にも縛られない、新次元の移動方法が発見された。
空間そのものをジャンプするワープ後方とは違い、あくまで現空間に留まりながら、光速も時間も超える超々光速度常態航法を、発見当初より人々は「神の裏技」と呼んだ。
単純な速度の違いで言えば、ランドホーリーから地球まで、神の裏技では三日の距離も、太古の光速航法では三百年以上、ワープ航法なら一日である。
科学を追求し発見された新たな超々光速度常態航法を以て、人類はあらためて神の存在を意識したりもした。
という航法の歴史の恩恵で、移民惑星への進出も捗り、また今回のような困った男性たちの命も救う事が出来るのだ。
「でもまぁ…」
対処法の信憑性はともかく、少年たちの命に係わる緊急事態である事に、間違いはない。
ホワイト・フロール号は多くても四人までが乗船の限界なので、五人の少年たちは、ランドホーリーが用意した医療用の輸送ポットで搬送する手筈となった。
面会をすると、五人とも、ユキよりもマコトよりも、身長が高い。
「「「「「あの…ご迷惑をっ–うわわっ!!」」」」」
二人と会った学生たちは、噂に聞いて映像としては見ていたスーツ姿を目の当たりにして、真っ赤になった。
中性的で、同い年の女子たちよりやや背の高いマコトと、お姫様のような優しく柔らかい雰囲気で平均的な身長のユキ。
ねこ耳とうさ耳をピクんと立てたせ、黒いねこ尻尾と白いうさ尻尾が、誘うように揺れている。
大きなバストに、括れたウェスト。大きなヒップと、ムチムチの腿。
純白の艶を魅せるメカビキニは面積も小さく、胸の深い柔谷間や、丸くて張りのあるTバックのお尻が、少年たちの若い性を、容赦なく刺激していた。
男性の視線にはそれなりに耐性のある二人は、しかし自らの魅力には無自覚なまま、少年たちを心配させまいと、優しい笑顔を見せる。
少年たちの驚きが、まるで犯罪者扱いをされて怯えているように感じられた、マコトとユキだ。
「大丈夫ですよ。地球まで、ボクたちが責任を持って、送りますから」
「皆様は どうかユックリと、お体をお休めくださいな」
「「「「「は…はぃ…」」」」」
輝く笑顔が眩しくて、魅惑的な肢体もエロくて眩しくて、五人の少年は恥ずかし気に俯いてしまった。
(そんなに申し訳なく感じる事 ないのに)
ちょっと可愛いな。と、マコトもユキも感じたり。
そしてコンテナに搭乗開始。
名簿をチェックしていて、二人が気づいた事があった。
「…あの子たち、十五歳だって」
「私たちより、年下ですの?」
一気に、弟の世話を焼く姉の気分になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます