第38話お家へご招待①
そして今に至り、図書館で村下君との会話。
「ま、なんにしても良かったよ。登はいい奴だからな。見る目あんじゃねぇの?」
村下君はそっぽを向いて、照れ臭そうに。彼が言うには、彼もまた登に相談に乗ってもらったことがあるらしい。
具体的に解決策を出してもらったとかではなく、悩みを聞いてもらったのだと。
当然、登はそんなことを誰にも言ってない。
「アイツ、いい奴なんだけどなぁ〜。全然モテてねぇんだよな。誰か紹介してやろうかと言ったんだがな」
紹介してたら抹殺しなければいけなくなるところだった。村下君、命拾いしたね!
しっかし、私の愛ってほんと無駄に重いなぁ。なんというか相手の幸せが第一とはならんものか。
いやいや、幸せであって欲しいよ? 最悪、その隣にいるのが私ではなくても、登が幸せになればそれで良い。私自身より登が大切だ。ただその世界に私は存在出来ないというだけで……。
いやいや! それがアカンだろ! 私!
私がどういう存在であれ、私が居なくなったり傷ついたりしたら誰よりも登が傷つく!
それだけは許せん! 私でも許さん。死んでも許さん!
あ〜、矛盾してる〜。
恋心めー、なんて厄介なー。
「紹介する必要ないからしないからな? だからそんな顔で睨むな」
おっと、無意識で村下君を睨んでいたらしい。
「さてと休憩しすぎたな。昼になったら用事あるから俺帰るわ。登に
「私も昼から夏期講習に参加するから、ごゆっくりね〜」
かの子は、おーっほほほほとわざとらしく笑う。
その後、昼まで勉強して2人は帰って行った。
私はご主人様の帰りを待つ犬のように登が来るのを待つだけだった。
それから3日後。
私は例のイチャラブ大作戦実行のために更なる攻勢を掛ける。
お家へ登を招くことにしたのだ!!
お母さんナイス!
「早速、今日お母さんが家に来てはどうかって」
「へ?」
そんなわけで当日に登と一緒にお家へ帰る約束を取り付けた。当然、るんるんだ。
鼻歌まで歌っていたらしい。登に指摘されて初めて気付いた。
「そういえば聞いたことなかったけど、登はなんで1人暮らししてるの? 高校で1人暮らしってあんまりないよね?」
食べ終わった弁当を片付けながら、私は尋ねた。
谷田君も1人暮らしをしていたが、それも例外といえば例外なのだ。
「2年になって直ぐに親が転勤になって転校する話になってたんだけど、説得して1人暮らしさせてもらうことにした」
「ふ〜ん? なんで残ろうと思ったの? あ! 部屋に女の子連れ込もうと考えた?」
万が一、私以外を連れ込もうとするならば徹底的に阻止する。
「考えてません。大体、今まで俺の部屋に入った女の子は美鈴しかいないし」
その言葉は不意打ちだった。がくっと私は椅子から落ちた。
「大丈夫か!?」
登の手を見つめ顔が真っ赤になり、あわあわとへたり込んだまま。
今、彼は……いや奴は自分がどのように言ったか気付いていないというのか!
私の目をしっかり見て、私もその目を逸らすことが出来ずに、美鈴しかいない、と言ったのだ。
美鈴しかいない、と。
恋する乙女は単純だ、特に私はな!
「わ、私だけ?」
「そうだが?」
「朱音とかは?」
「2年の時、集まって俺の部屋に遊びに来てたときも朱音は来なかっただろ? ましてや、1人で俺の部屋に来たの美鈴だけだが?」
私だけ、私だけ……。
ふぅおおー、奴は新手の暗殺者か!?
そんなことしなくても簡単に登の手にかかってやるからな! いつでもばっちこい!
「だいたいだなぁ、男は狼だからな? 男の部屋に女の子が1人で行くというのは、とても危険なことで美味しく食べられても仕方ないことなんだ。分かったなら今後は気をつけるように」
オーケーブラザー、まだ慌てる時間じゃないということだ。
私は素直に頷く。
「分かった。登の部屋以外は今後も気をつけて行かない。登も私以外に部屋へ連れ込まないように」
食べるのは私だけにしなさい。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「早速、今日どうかって」
「へ?」
今日も俺たちは並んで美鈴の作った弁当を食べている。その弁当の中で俺は卵焼きが1番好きだ。店で出てくる卵焼きなどではない。
家庭の味だ。もっと言えば美鈴の味だ。それだけでご飯三杯は軽くいける。
弁当に入れるおかずに何が良いかと聞かれた時に、美鈴の作った卵焼きを美鈴の味として大絶賛しておいた。
あまりの熱弁ぶりにかなり美鈴の笑いのツボに入ったようだ。
顔を真っ赤にしてしばらく肩を震わせながら、ついにはうずくまれてしまい、俺が慌てて駆け寄るとしきりに首を横に振られた。
その後、顔を起こした美鈴は涙目で、その日は真っ赤な顔のまま目を合わせてくれなかった。
ただ俺の熱意は伝わったみたいで、それ以来、弁当には卵焼きがずっと入っている。
話を戻そう。
「良いのか?」
「うん」
俺はそう返事をすると美鈴は満面の笑みで頷いた。
並んで弁当を広げながら、美鈴はご機嫌で鼻歌を歌っている。前に何歌ってるんだ、と聞くと驚いた顔をされた。無意識だったらしい。
「そういえば聞いたことなかったけど、登はなんで1人暮らししてるの? 高校で1人暮らしってあんまりないよね?」
食べ終わった弁当を片付けながら、美鈴が尋ねてきた。
その弁当箱の洗い物も申し訳ないことの一つだ。これまた洗い物は地味に面倒だ。それも言ったが美鈴には、じゃあ、今度なにかでお礼して、と言われてしまった。なお、お礼を考えているがピンッと来る物がない。
「2年になって直ぐに親が転勤になって転校する話になってたんだが、説得して1人暮らしさせてもらうことにした」
「ふ〜ん? なんで残ろうと思ったの? あ! 部屋に女の子連れ込もうと考えた?」
自分で言いながらジトッとした目をする美鈴。
「考えてません。大体、今まで俺の部屋に入った女の子は美鈴しかいないし」
がくっと美鈴が椅子から落ちた。
「大丈夫か!?」
美鈴に手を差し出す。
美鈴はコケて座り込んだ体勢のまま、顔を真っ赤にしてあわあわと震えている。
「わ、私だけ?」
「そうだが?」
「朱音とかは?」
「2年の時、集まって俺の部屋に遊びに来てたときも朱音は来なかっただろ? ましてや、1人で俺の部屋に来たの美鈴だけだが?」
美鈴は引き続き、あわわ、あわわと動揺している。最近、彼女は
それは彼女が前よりも、俺に素を見せてくれている証拠に他ならない。
それはそれとして、丁度この話になったので前々から注意すべきと思っていたことについて
「だいたいだな、男は狼だからな? 男の部屋に女の子が1人で行くというのは、とても危険なことで美味しく食べられても仕方ないことなんだ。分かったなら今後は気をつけるように」
そう注意すると、美鈴は素直に頷く。
「分かった。登の部屋以外は今後も気をつけて行かない。登も私以外を部屋に連れ込まないように」
ん? 俺は例外?
信用してくれているのは嬉しいが俺が1番危険だと思うぞ?
真っ赤な顔のまま、何度も頷いている美鈴を見て、俺は天井を見上げ片手で顔を覆う。
あちゃー。
これは信用を裏切れない。
俺は美鈴を好きな男でもあるが、美鈴を大切に思う友人でもあるからだ。
なので美鈴を襲ってしまうなどと傷つけるようなことは決してできないのだ。
俺、どこまで我慢出来るんだ?
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