第29話母にバレた!?
俺、倉橋登。状態、混乱中。
なんだ、これ?
なんでこうなったんだ?
いやまあ、自分で美鈴の頭を触っているわけなんだが。
男の髪と全く違い、やわらけぇ〜。
手に伝わる感触がやばいのなんのって。
よく漫画や小説で頭ポンとか撫でたりするシーンがあるが、アレは誰よりもやってる側の方が嬉しいのだと気付かされる。
大体、女性がそこまで髪を触られたりしたいかと言えば、全くそんなことは無いはずだ。相手によってはセクハラで訴えられる程になる。
とまあ、脳味噌がフル回転しながら、さっきからそんなことばかり考えているのには理由がある。
何故か俺が美鈴の頭を撫でているのだ。
わけ分かんないよな?
誰よりも俺がわけ分かんない。
何? 俺、訴えられるの? 罠?
策士美鈴の計略にハマった?
恐ろしいことにこの計略は……防げない。
触りたく無いのかと言われれば、とても触りたい。
しかもこれで俺は美鈴の頭の感触を知ってしまった。常習性のある危険な麻薬と一緒である。
今、美鈴は俺の正面から机に顔を伏せ、休んでいる。無防備過ぎだと怒るべきところかもしれないが、朝のあの疲れ切っていた表情を知っているから、今は休ませてあげたい。
「病み上がりだもんな」
2日も休んでいたから心配した。朱音にも状況を聞いて見舞いにでも行こうかと思ったが、昨日の時点では回復しているということで、学校に出て来るのを待ってくれと朱音に言われた。
その朱音は先程、こちらに様子を見に来て俺たちの姿を見てからかうでもなく……逆にホッとした表情をする。
「帰り送ってあげてくれる?」
と言うので
しかし美鈴、そのままだといつまでも寝そうだな……。
起こして連れて帰ろう。
「美鈴、美鈴……」
彼女は口元がモニュモニュ動き顔を上げる。そのまま俺の顔を見て、パァ〜っと笑顔になる。
う!? 眩しい、溶かされる!
いやいや、マジで眩しいんだ。
なんでそんな顔するんだ、胸がとんでもなく痛い。
かなり痛いけど、これがまた幸せに思ってしまうのが、俺ってもしかしてマゾか、などと思ってしまう(混乱中)。
いいや、俺は悪くない、きっと悪くない! 悪く……ないよね?
好きな子が自分の顔を見て満面の笑みになってくれるって、幸せ過ぎて死にそうになっても仕方ないよね?
HAHAHA、もう今日は今朝から何がなんだか。
「帰る?」
美鈴はそう言ってトドメに小首を可愛く傾げた。どことなくまだ寝ぼけていそうだけど。
「あい」
はい、です。もうまともに、はいも言えません。尻に敷かれそうですが尻に
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
大好きな人との帰り道。
足元がふわふわする〜。
……あれ? ヤバいぞ?
ふわふわじゃなくてフラフラしてないか私?
頑張れ私! 負けるな私!
うん、無理だな。2日泣き続けてグダグダになってたのが1日では身体は回復しなかった。
周りの景色も良く分からん。
もはやこれまでというのか。
誰かが私を支える。
誰かって決まってる。
登だ。
「乗れ」
何処に? うむ、君と一緒なら何処へでも〜。
あ、背中?
よいしょ、ボフッと。
再度ふわふわ〜と私はどうやら登に背負われているようだ。
流石にこの歳になって誰かに背負ってもらうとは思わなかった。
「登〜」
「なんだ〜?」
「一緒に居てくれー」
「……おー、分かった」
「えへへ……」
その会話は私の願望が生んだ幻だったに違いないだろうと思っていた。うとうととしながら意識を取り戻した時、私は家の前に居た。
登の背に乗ったまま。
目の前にはエコバックを持ったうちの母。
へい! マミー!
これは幻かい?
幻だと言っておくれ!
「何やってんの、美鈴?」
現実だったー!?
登の背からよいしょよいしょと降りる。
とっとと、ちょっとまだフラつく私をスッと登が支える。
「こんにちは、美鈴さんの友人の倉橋登と言います。美鈴さんが体調が悪そうだったので送らせて頂きました」
ああ、礼儀正しい登、素敵だー!
「あらあら、まあまあ。それはそれは、うちの馬鹿娘がお世話になりました」
我がマミーがぺこりと頭を下げる。
我が母ながら、あらあらとまあまあって、本当に言うんだね〜。
あと登。
友人ではなくハニーと呼ぶのだ。
その登が心配そうに私に声を掛けてくる。
「大丈夫か?」
ああ、ごめん、マミー。
マミーの前だけど私、今、とっても乙女な顔だわ。
「大丈夫」
「大丈夫じゃなさそうだな」
何故、即座に否定する。
ふと視線を上げる。
住み慣れた2階建の木造建築の我が家の門の前で、心配そうな顔で立つマミー。
ああ……。
「ごめんなさい。心配かけた……」
心配させて、たんだ。
親不孝な娘でごめんなさい。
「……悪い。後で謝罪でもなんでもするから」
なんだとー!?
なんでもするなんて言ったら、なんでもされるぞ!
私に。
身体がフワッと浮く。
おお! 宙に浮いた。
というか、これお姫様抱っこってやつだなぁ。
なんてこった、せっかくのお姫様抱っこなのに実感が湧かない。
「美鈴のお母さん。すみませんが案内お願いします」
そのまま私は登に運ばれて家に入り、さらに私の部屋へ。
ようこそ! 私の部屋へ登!
父以外の男性がこの部屋に入るのは初である。その初めてが登とは感動もひとしおだ。
「熱がありますね」
「やっぱり……。うちの馬鹿娘が重ね重ねありがとう」
「いえ、美鈴は大切な友達ですから」
ああ、登が母に
大切な友達を大切なハニーとか言い直してくれていいのよ?
「のぼる〜……」
行かないでぇ〜。
そんな私に登が優しく笑った気がする。
「大丈夫、ここに居る」
そう言って優しく頭を
私はそれが幸せで、嬉しくて、笑顔になって、私は暖かな眠りについた。
次の日の朝、体調は万全だ。
万全なのだが私の気分は
母が水色主体の私の部屋に入り私の熱を計る。
「もう熱は無いわね。後、顔色も大丈夫そうね。……いい子だったわね? 頑張りなさいよ? まずは友達からの
残念ながら私の昨日の記憶はバッチリ残っている。
ひいいやあああ!!!!
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