そして恋は変化する
第28話恋を拗らせた2人
「それで登〜。良い女ってどんなだと思う?」
美鈴が昼にいきなり俺の机に来て、そう聞いてきた。
知るかー!
あっれー? そもそも俺に良い女になる宣言をした美鈴がなんで俺に聞くんだ?
良い女、良い女ねぇ……。
「美鈴は十分良い女だと思うけどなぁ」
恋愛関係なくそう思ってる。
「はう!」
美鈴が胸を抑える。
おお! リアクションいいなぁ。
朝の時はまだ不安だったけど、すっかり良くなったんだな。
良かった。
何か吹っ切れたのか、すっげぇいい顔してる。
どっからどう見ても良い女だと思うけどな。
俺も負けていられない、そう思わせられる。
窓から見える景色も緑を濃くしていきながら日々変化していく、それと同じだ。
暑い夏が来る。
しかしながら同時に灰色の受験シーズンの到来でもある。
大事なことは何か。
未来を見据え、何を求め、何を成していくのか。それを受験と戦いながら定めなければならない。
早いやつだと推薦で秋に入ったらすぐに大学が決まったりする。
俺も冬に入る前には決着をつけねば。
それがこのシーズン……分かるか?
そんなわけで灰色の受験戦争からの現実逃避も兼ねて、質問された良い女の条件について考える。
だけど改めて言われると分からない。
良い女の条件?
うーん。
俺では答えが出そうにないので。
「御影〜。良い女の条件ってなんだと思う?」
御影は困ったような顔をして、
「それ昨日、朱音にも聞かれた。俺からすると……自分の意志を持っている女性、かな」
「「おお!」」
俺と美鈴は同時に感心した。
流石、御影さん。
良い答えを出して来た。
「面白い話してるじゃない?」
眼鏡をクイっとさせるが、本橋さんは頭は悪くはないが委員長タイプという訳ではない。
それでも眼鏡がとても似合う知的美女って感じかな?
「良い女の条件、百戦錬磨では
百戦錬磨かぁ。
百戦錬磨の美鈴は……イメージ無いなぁ。
そうするとふと気付く。
「良い女=惚れる女という訳では無いのかも? 俺なら百戦錬磨の女性はちょっとお断りしたいと思うから」
好みもあるけどね〜。
「ならば却下ぁぁあああ!!」
美鈴が言い切る。
「むむむ!」
本橋さんが
「なら笑顔が素敵とか、努力する女とかはどう?」
「ああ! 良い女っぽいな!」
良い女っぽいであり、良い女であるかと言われると不明だ。
「そうだね、俺が思うには
横合いから君咲も参戦。
「それ宝生院先輩じゃね?」
「ああ、彼女は良い女だ」
「連絡取り合っているか?」
君咲は意味有りげにニヤッとする。
「作品についてたまに意見を聞いている。今度、会う約束をしている。……倉橋にはあの時は世話になった」
それだけ言うと、彼は自分の席に戻っていく。そのことを伝えに来てくれたのだろう。
俺よりも美鈴の方が
「何かあったの?」
本橋さんは事情を知らないので首を傾げる。
そうは言っても、俺もなんと言って良いものか分からないので簡単にだけ。
「君咲たちの悩みごとの一つが解決に向かってる、そのことを教えてくれたんだ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
半ば私の中では告白に当たる宣言をして、直ぐに私は攻勢に出た。
受験シーズンが始まるので、これから遊びやイベントに行く機会も大幅に減る。
クックック、だが私にはある秘策があった。
むしろ私はこの世で唯一、灰色の受験シーズンに感謝をする者になるかもしれない。
それはズバリ!
ワキワキ(ワクワクではない)ドキドキ!
2人で受験対策!
図書館デートはお決まりコース、作戦だ!
この作戦の最大にして最強の利点は、合法的に(!?)彼のそばに居れることだ。
私自身は登の全てが欲しいので、長期戦の覚悟はしたが世の全てがそれを認めるわけでは無い。
それなら告白でもして、さらに合法的(ここまでくると合法ってなんだ?)に付き合っちゃえよ、となるかもしれないが、それではダメなのだ。
振られた時のダメージが大き過ぎると言うのもあるけれど、上手くいったらいったで、敢えて具体的に言わないが、私は止まらなくなる。
とても極端に言うと、登以外の
それは良い女と言えるのか?
否! 断じて否である!
繰り返すが私が欲しいのは、これから数ヶ月のイチャイチャラブラブでは無い。
それも本当は欲しいけれども!!
これからの人生を彼の隣で共に歩むことだ。そのために受験があり目標がある。
差し当たり私がやるべきは、彼の心に住みつつ、彼が他に行かないようにガードしつつ、受験も頑張りつつ、良い女になることである。
やること多いな、おい。
ということで第一にやるべきこととして。
放課後、またしても登の席に行く。登の席は窓際の2番目、前の席は本橋さんだ。
彼女とはお話しておくべきかどうか? まあ、色々相談に乗ってくれる良い人ではある。
その本橋さんは塾に通っているらしく、放課後はいつも
「ところで登。受験勉強どうするの? 塾とか行かないなら勉強一緒にやらない?」
「一緒に? 図書館とかでってことか? おー、良いぞ。有り難いな。1人でやってると心が折れそうになるしな!」
良し!
あっさりと了承してくれる。
……あっさりすぎない?
ちょろいヒロイン、チョロインじゃ無いよね?
目的達成したので、ちょっとだけ休憩。
身体が回復したとはいえ、実際は本調子とは言えない。
とにかく今日はとても疲れた。
本橋さんの机に座り、登の対面から机の上で身体を伸ばす。
半分、寝るような体勢で顔を伏せていると、登が手を所在なさげにウロウロさせている。
「髪、触りたいの?」
伏せた顔でチラッと下から覗くように見て尋ねる。
登は顔を赤くしてグッと息を飲むような感じ。
おおお、良い反応だぁー。
「良いよ? 撫でても。私、ちょっと休むから起こしてね」
顔を完全に伏せると、彼が
好きでは無い人からされると気持ち悪い限りだが、好きな人からされるとこんなに穏やかな気持ちになれるのだなぁ……。
ああ、そうか。
私は恋を
ふわふわと夢見心地でそんなふうに自覚してしまった。
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