第4話文化祭はカップルデー?
ウチの学校の文化祭は3年に一度。だから、カップルたちの浮かれ具合も半端ではない。
夜通しイベント作業をやった男女がロマンスの果て、付き合い出すのだ。
繰り返すが生まれてこの方、そんな幸運に恵まれたことは無いし、恵まれる気配すら感じない。
「
雪里に頼まれただけでウキウキしながら、お願いを聞いてあげる。
ああ、今日も髪を一本に縛って一生懸命の顔で可愛いなぁ。
まあ部屋に帰ってから、その報われなさに自分で苦しむことになるのは分かっているのだが。
それと残念ながら夜通し作業を行うイベントが起こることは無い。何故なら居残り禁止だからだ。
だから放課後と授業の時間を使い、出し物の喫茶店の準備だ。
大きな紙に模様や案内を手分けして書く程度。
新たなロマンスが生まれる要素も……そこ、冬木!
本橋の手に触れて慌ててるんじゃない!
君咲、絵上手いな。すまん、お前が絵上手いのクラスで俺しか気づいていない……。
「美鈴! ちょっといいか?」
立山が雪里を呼び、何々〜?と小動物のように雪里が付いて行く。
俺は他のメンバーの進み具合を確認して、明日の買い出しや作業の連絡などについての連絡を、先生に伝えに行く。
何故なら俺は文化祭実行委員だからだ!
もう一人は雪里だ。
狙いすぎてて、流石に自己嫌悪するが。
真っ直ぐな廊下を進み、理科準備室を越えると職員室になる。
その理科準備室の扉が少し開いており、中で立山と雪里が寄り添っている。
俺は軽いため息をつき、音がしないように扉をそっと締めて職員室へ向かった。
どうにかなるもんじゃ無いからな。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
誰かの気配がした気がして、立山君を失礼がないようにそっと押し返した。
「いま誰かいなかった?」
許せ、彼氏よ。
私は晒しプレイに耐えられる鋼の忍耐はないのだ。
立山君は扉の向こうをじっと真顔で見つめた。
なにかを考えているような顔で。
すぐにニコッとこちらを見て笑いかける。
「いや? 気のせいじゃないかなぁ?
誰かに見られるのは嫌?」
「うーん、ちょっとご遠慮したいかなぁ〜」
そもそも抱き締められることさえ慣れていない。
皆はこういうのはすぐ慣れるものなのか。
どうにも私はむず痒さを感じてしまう。
申し訳ないが付き合って2ヶ月になるが、彼氏である立山君とのこれが初ハグである。
小学生という勿れ。
今時は小学生の方がもっと進んでいるぞ?
世の娘を持つお父さん、覚悟されよ。
……多分。
立山君はそう言った私に優しかった。
それ以上を求めることもなく、そっと身体を離してくれた。
やはり、このイケメンはイケメンだけあった。
立山君と付き合い出したのは、どこかの漫画や小説のようなドラマチックなものではない。
半ばクラスのノリで、誰が好き、誰と誰が付き合っている、夏休み明けのそんな少し浮ついた空気の中。
俺と付き合ってみない?
そんな軽いノリから始まった。
それはもしかしたら青春ドラマのように、地味な女がイケメンと付き合い出して変身していくシンデレラストーリーだったかもしれない。
掛けていた眼鏡をコンタクトに変えて、髪型も服装も化粧までも立山君のアドバイスで変化していった。
彼色に染められる!
……だったら、ロマンチックだったんだけど、どちらかといえば先生と教え子のように、私が何もかも知らなかったのだ。
────だから、このときの私はわかっていなかった。
恋がどんなに恐ろしく、心をかき乱してしまうものなのか。
……正直、すまん。
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