6話 精霊魔法とスキルの習得
「これからどうするつもり? 」
メイサがトキジロウに問う。
魔法とスキルの全てが、習得可能と言われたトキジロウ。
本来なら魔法とスキルの習得に勤しむのだろう。
だが、腹は減る。
自分の食い扶持を稼がなければならない。
「メイサ 俺は日本に帰る為、モンスターを退治して魔素ってやつを浄化しないとならない 協力してくれるか? 」
「仕事に支障が出ない程度なら…… 」
「仕事… 俺のいた世界に 『働かざる者食うべからず』 という言葉がある 仕事の内容は何でもいい… 仕事を紹介してくれ」
トキジロウの目は真剣だった。
「仕事といってもねえ… 何が出来るの? 」
メイサがトキジロウの顔を覗き込んで質問する。
「…… 」
「…… どうなのよ? 」
「キリトリとか… 」
「キリトリ!? どんな仕事なの? 」
「借金の回収… 」
「…… 」
トキジロウは、まともな仕事をしたことがなかった。
自分は、何も出来ないと改めて気付かされた。
背中を丸め、ひざを抱えて酷く落ち込んだ。
どんより感が漂う。
「だいたい、予想はしていたけど… 」
腕を組み、たばこ吸いはじめたメイサ。
バラック小屋に積まれている箱に目がいく。
メイサは閃いた。
「これよ! トキジロウ! 精霊魔法を覚えなさいよ! 」
「ん!? そうすれば飯食えるのか? 」
「食えるも何も 上手くいけば蓄えが出来るわよ! 」
「なにぃ!? 教えろ! メイサ」
僅か5秒でトキジロウは復活した。
「じゃあ、出かけましょう まずは、四大属性を覚えるわよ」
「おう! 四大属性が何だか知らんけど」
メイサは、カウンターのチュウに声をかけるとバラック小屋の裏に回る。
メイサの後に着いて行くトキジロウ。
そこには、馬車が一台。
荷車を引く大型トカゲに似たブリッシュという動物がいた。
「行くわよ 乗って」
黙って馬車に乗り込むトキジロウ。
ブリッシュの手綱を握るメイサが掛け声をあげる。
「ハッ! 」
手綱を操るメイサ。
馬車は町の中心部からどんどん離れ、山に向った。
山に入る手前、小さな川が見えた。
川の先に滝が見えた。
滝壺、川、岩が見える場所で馬車を止めた。
メイサが荷台に積んであった木材を降ろし火を起す。
当然、生活魔法【ファイヤー】で種火を起した。
「ここなら回りに迷惑かからないから 生活魔法も覚えちゃったら? 」
「あ ああ… 火か 」
「うん イメージはしてね」
トキジロウは、メイサの火を見ながら呪文を唱えた。
【ファイヤー】
突き立てた指先から火が吐き出された。
「きた! 火だ! 火!! 見ろ! 火が出たぞ!! 」
トキジロウは大喜びしている。
子供のように、はしゃぐトキジロウを見てメイサは和んでいた。
「まだまだ、これからなんだからね それくらいで喜ばない」
先生風を吹かすメイサ。
今までのトキジロウなら馬鹿にされたと切れるだろう。
魔法やスキルを覚える事に、一喜一憂するトキジロウの耳には、響かない些細な言葉にすぎなかった。
収束イメージで【キャンセル】を使用するトキジロウ。
指先から吹き出た火が消滅する。
メイサは続けて、生活魔法の【ウォーター】【ウィンドウ】をトキジロウに見せて習得させる。
トキジロウはコツを掴んでいた。
見たままのイメージで生活魔法を取得した。
「さあ これからが本番よ 精霊魔法を見せるわ」
メイサは最初に【風の小太刀】を発動する。
「風の精霊よ 我に力を貸したまえ【風の小太刀!!】」
掛け声と共に、片手で物を切るように水平移動させる。
メイサの狙いは目の前を流れる川。
水面に水飛沫が上がる。
トキジロウはイメージ通り【風の小太刀】を使用した。
【風の小太刀!!】
気合を入れ、川に向って水平チョップ。
……
何も起こらなかった。
「何でだ!? イメージは出来ていたはずだが… 」
「詠唱しなさいよ スキルじゃないんだから あたし言ってたでしょ? 」
「あ… あれも言うのか? 」
「当たり前じゃない 風の精霊に力を借りる宣言をしないと駄目よ」
「は… 恥ずかしいんだが…… 」
「…… 凄く解るけど… じゃあ、頭の中で詠唱してから魔法名よ」
恥ずかしがるトキジロウに、上級者が魔法行使の詠唱カットする方法で発動させることにした。
上級者が、よく行う詠唱カット。
実は頭の中で詠唱していたのだ。
「さあ、やってみて」
「…… 」
(あれ? あいつなんて言ってたっけ? 風の精霊 までは覚えてるんだけど 次ぎなんだっけか? 力をなんたらって…… めんどくせえ)
トキジロウはメイサの詠唱を全部覚えてなかった。
大雑把に詠唱した。
(風の精霊… 力貸せや! )
【風の小太刀!】
ザバーン!!
水面に大きな水飛沫が跳ね上がった。
メイサの見せた【風の小太刀】を優に上回る威力。
メイサが驚く。
「ちょっと…… 驚いたわ 何なのその威力は… 」
「おいおい…… すげーじゃんか俺!! 見た? なあ!! 今の見た!? 」
またしても、はしゃぐトキジロウ。大きく目を見開きメイサに訴えた。
そんなトキジロウを見てメイサが呟いた。
「…… うざっ… 」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
精霊魔法
風属性 【風の小太刀】 対象を鋭い風の恩恵で切り裂く
火属性 【火の宝玉】 対象を火の玉で焼き尽くす
水属性 【水の息吹】 対象を具現化した水流で飲み込む
地属性 【地の恩恵】 回復結界の設置 範囲内で一定時間回復する
精霊スキル
【構築】 精霊の力で精霊転送、精霊電話、精霊環境を構築する
【アタッチメント】 各属性をアタッチメントに注入できる
付与したアタッチメントは武器に属性を付与できる
うざいトキジロウは、難なく精霊魔法を習得しバラック小屋に戻った。
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