第3話 大通り

 

 街の入り口に着いた。傍にあった駐輪場に自転車を止め、娘と手をつなぎながら会場である街の中心部へと向かう。

 街にはいくつもの通りがあるが、その中で最も大きく街の中心にあるブロッサム通りが式典のメイン会場となっている。式典も厳かな雰囲気のものではなく、もっと大衆向けの祭りに近いものだった。

 ブロッサム通りに近づくにつれて人の往来が激しくなる。家族連れの者、子供だけで来ている者、若いカップル、更には外国人旅行者の姿まであった。

「わくわくするね」

 娘が笑みを浮かべてこちらを見る。

「そうだね。ところで、今日の一番の楽しみは何だい?」

「花火!」

 娘の回答は稲妻のように早かった。

 花火はこの式典のフィナーレを飾る催し物で一番の目玉だ。共和国の平和と更なる発展を願い、打ち上げられる花火はその数4万発にも及ぶという。ほとんどの国民がこの花火を見るために今日の式典に足を運んでいた。

「花火はお父さんも楽しみだよ。でもまだ始まるには早すぎるかな」

 日はまだ西に傾き始めた頃だった。花火が打ち上がる夜まではまだ相当な時間がある。

「最初に屋台村に行こうか」

 私が提案すると娘は元気よく返事をした。

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