13-2

次の日も、しげさんは具合が悪そうだった。

「ほんっとに情けないわねー。飲めないくせに女の子の前だからって見栄張ってー」

エツコさんからの口撃にも、しげさんは「すみません」と小さな声で答えるだけで、机に肘をついたまま虚ろな目をしていた。

私はしげさんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。しげさんがお酒飲めないをこと知らなかった。事前に聞いておくべきだった。私のせいで、気を遣わせて、無理をさせてしまった。エツコさんの前で弁明する訳にもいかないし、控室に二人きりになったところで謝った。

「しげさん、本当にごめんなさい!私、しげさんがお酒飲めないこと知らなくて、無理させてしまいました…」

「いや、小坂ちゃんは悪くないよ」

「せっかく貴重なお休みをいただいたのに、翌日の業務にも響かせてしまって…」

「小坂ちゃんに少しでもかっこよく思われたくて。おじさんが身分不相応なことするから、バチが当たったかな、えへへ」

自虐的に笑うしげさんを見て、胸の奥がキュンとなった。私にかっこいいところを見せようとしてくれてたの?しげさんは、私に誘われて仕方なく付き合ってくれたと思っていた。しげさんが、あの日どんな気持ちで私と一緒にいてくれたのかがわからなかったから、少しは意識してくれていたのだなと知れて、体調の悪いしげさんには申し訳ないと思いつつ嬉しかった。

でも、しばらくはちょっと誘いづらいかも。今度二人で出かけることができるなら、しげさんの好きなところに行きたいな。しげさんに楽しんでもらいたいし、しげさんのことをもっと知りたいから。

「私は、すごく楽しかったです」

「ほんとに?それならよかったー」

それだけ言うと、しげさんは机に顔を突っ伏して仮眠を取った。


しげさんと飲みに行ってから、スーパーでの距離もちょっと縮まったような気がした。仕事のこと以外の話もするようになって、しげさんは学校のことをいろいろ質問してきたり、私も昨日観たテレビの話とか、どうでもいいことも話せるようになった。

最初はすごく嬉しかったけど、日に日に物足りなさも感じ始めていた。しげさんは、私のことをどう思っているのだろう?好意は持ってくれていると思うけど、そういう対象としては、見てくれているのだろうか?いっそのこと、告白してしまおうか?でも、この関係を壊してしまう可能性があるから怖い。あくまで店長とバイトという関係の上で仲良くしてくれているだけなのに、急に私がこんな感情を持ち込んでしまったら、しげさんは困惑するかもしれない。

不安はどんどん募るけれど、今目の前にある幸せを壊したくなくて、本当の気持ちを隠したまま月が変わった。

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