凍る彼女

30万円の壁

1-1

調布よりの府中市に位置する大学までは、自転車で20分。天気が悪いときだけ片道220円のバスに乗る。実家の千葉から通学するには往復4時間かかるので、進学を機に一人暮らしを始めることにした。大学の寮に住んだ方が安いと親には言われたけど、どうしても共同生活はできないと無理を言ってアパートに住んでいる。部屋は2階の一番階段に近い位置にあって、南向きの7畳ワンルーム。

住宅街ではあるけれど、1分歩けば車通りが多くて自転車用レーンもある2車線道路に出ることができ、コンビニとスーパーが対角線の位置に建っているのでその点は便利である。でもなるべく、武蔵境駅まで自転車を飛ばして大型スーパーで買い物するようにしている。その方が断然安いので。

もっと大学の近くに住むという選択肢もあったけど、あまりにも大学の周りに何もないのと、休みの日とかにうっかり顔見知りの人に会いたくないなと思ったので、三鷹市を選んだ。


1限に間に合うためには、7:50に家を出たいところだけど、いつもギリギリになってしまう。テレビに表示された時刻は7:55。部屋を出て急いで階段を駆け下り、駐輪場まで走る。リュックをカゴに放り込み、自転車のカギを外して飛び乗った。なんでもっと早く準備できないんだろうかと、この場所で何度後悔したことか。もう夏休みが明けてから2週間が経とうとしているのに、夜型生活がまだ体に染みついてしまっているのかもしれない。


まず2車線道路に出て、スーパーを右手に見ながら自転車レーンを進んでいく。交差点を2つ越えると大通りに出るので、右に曲がる。ホームセンターやファストフード店、中古車販売所の前を通り過ぎると一つ目の大きな交差点が現れ、ここはまっすぐ進む。前から気になっていたのだけど、左手に見えるカラフルで丸みがあって、積木で作ったみたいなあの建物は一体なんだろうか?たぶん調べたらすぐわかると思うけど、わからないまま眺めている方が良い気がして、あえて調べないまま1年半以上が経とうとしている。そして、水色の歩道橋や、なぜか2軒横並びの全く名前の違うラーメン屋さんの前を通って大きな交差点に出れば、ようやく半分のところまで来たという感じだろうか。ここの信号は運次第で、タイミングが悪いとかなり待たなくてはいけない。朝の急いでいるときには大きなトラップとなる。ギリギリに家を出る私が悪いのだけれど。

今日はすぐに信号が青に変わって一安心。左に曲がってゆるやかな下り坂を走っていく。この通りは車道も歩道も細く、慎重に進む必要がある。野川の上に架かる御狩野橋みかりのばしを渡り、マンションや一軒家が両側に並ぶ道を行くと、調布市に突入。そしてすぐ府中市に変わる。大学まではあと少し。右手には新しくてきれいな一軒家、左手には畑というアンバランスな景色を中を進み、オレンジのベルが見えたら左へ曲がる。ほどなくして左手に見えて来るのが私の通う大学だ。広大で、緑豊かだけど、建物はとても洗練されていて現代的。特に、巨大円形広場は特徴的で、歩道の上が2階建ての回廊になっている。おしゃれかつ大学らしさのある、この雰囲気が私は大好きだ。

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