いつかは今やるべき事ですが②
仮にも、身内。兄である。
誉れと感じるべきだろう。
こんなにも、
「「「「「「「これを兄上様に」」」」」」」
老若男女問わず。
こんなにも、おモテになっていらっしゃるのですから。
(嫉妬、じゃなくて、なんだろ。呆れ?心配?)
奥ゆかしい皆々様方に頼まれたのは、手紙の手渡し。
外に出れば、一日に一回はこういう類いの頼まれごとはある。
兄上を含む、新撰組の御方々へ。
たびたび、しょっちゅう、太陽が昇り、沈むのが当たり前のように。
毎日毎日、お触書でも出ているのかと訝しむくらいに頼まれるので、私を含む新選組の家事を担うお手伝いさんたちの仕事に組み込まれている。
断るな。快く受け取り、速やかに確実に、本人に届けろ。
例えば、一部の御方々が嫌な顔をしていても。
例外は、ごく一部、ではあるが。
丁寧に積み重ね、紐で括り、風呂敷で包んで、抱えた数々の文は、実質軽々と感じるはずなのに、何故肩に打撃を与えるほどの重みを感じるのだろうか。
答えを知っていながらも、問わずにはいられず。
重たい足を、一歩、いっぽと動かし続けるのであった。
「嬉しい?」
その問いは、あなたが受けるべきものではないでしょうか?
などと、返すのは、もう疲れた。
ので、この人が満足する答えを返し、さっさとこの部屋から出よう。
「ハイソウデスネ。モテモテのアニウエがイテ、ワタシはシゴクウレシイでス」
「んふふ。でしょう?」
「デハ、ワタシはコレにて。ユウゲのシタクがアリマスノで」
「働き者の妹がいて、お兄ちゃんもすごく鼻が高いわ」
「ソウデスカ」
「でもね。怖い顔を止めてくれたら、それと、木刀を鼻先に向けないでくれたら。お兄ちゃん。もっと嬉しくなるなあ」
「無理です」
「真顔止めて!」
シクシク泣かないでほしい。
ちょっとだけでも、良心が痛む。
「兄上が遊び歩かないでくれたら、木刀は止めますよ」
「無理」
「さようなら」
「待ってまって!だってしょうがないじゃない。理由は言ったでしょう?」
「運命の人を探し続けているんですよねでも運命の人は自らで創り出すものですよさっさと決めてくださいお相手はかわいそうですけど」
「淡々と息継ぎしないで言わないで」
頭が痛くなる。
だからあまり近づきたくないのだ。
身を守る為には、この人の傍を離れるべきではないとわかっていても。
「兄上は戻りたくないのですか?」
「別に」
「ですよね。前にも聞きましたけど。聞いたのに、訊いた私が莫迦なんですけど」
「帰りたいんだよね?」
「とっても、可及的速やかに」
「でも、私たちは私たちのやるべき事をしないと帰れない」
「そうですね。そう言われましたね」
「なら、やるべき事を一生懸命しないとね」
「それが伴侶探しですか?」
「それもあるわね」
「でしょうね。でも、」
「ええ。言いたい事はわかるけど。でも、しょうがないのよね。見つけたいのよ」
いつも。
いつもいつも。
その優しい目は変わらない。
愛しくて、たまらないと伝えて来るその目は。
この人は、実の兄ではないし、血の繋がりはないはずだし、生きている世界も違う。
と、伝えれらはした、が。
(私の知らない事が、まだ、ある)
なんらかの、繋がりはあるのだと思う。
微塵も考えたくないけれど。
「夕餉の支度がありますので。終わったら、また、護身術を教えてくださいね」
「付け焼刃のね」
「知らないよりはマシですよ」
「私が守ってあげるって言ってるのに」
「万が一があるでしょう?」
この人なら危険から身を守ってくれる。
神様も保証していてくれるからか。
本能的に嗅ぎ取ったからか。
揺るぎない事実として、認識している。
けれど、
「ねえ、兄上」
「うん、そうだね」
同時に、不安も抱いている。
この人は、この世界の、この時代に、何かをするのだと。
『いつか書きたいと思い続けている新選組パロディの一端。本当の本当に一端。パート2』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます