竹燈夜




 竹燈夜の導きのままに ほ を進める

 ぽわ ぽわ

 その灯火は生まれたての赤子の息吹のよう

 だから

 こんな時刻でも心細くない


 途切れた先に無数に散らばっているのは、広げられ寝かされている無数の蛇の目傘

 正体と数を知らしめるのは無限の蛍の光

 熱き生命の瞬き


 柄を掴むか否か


 小さく頭を振って傘の合間をすり抜ける


 次には何が


 思考を動かすと、蛍は消えた

 瞬きを一つ


 次には業火

 おどろおどろしく、禍々しい炎が先の見えない天へと、いつ、いつまでも続く

 間近に在っても、不思議と熱さは感じない


 進むか否か


 この身を燃やすか否か



 呼ばれた気がして、けれど、振り返らない



 にやり


 それはそれは、とても憎たらしい態度だっただろう

 眼光を鋭く

 口元を歪に上げて

 顔から下は不自然に力を抜いて


 手に持つ櫂で稲光のように空を切り裂く

 業火を真っ二つにたたっきる


 瞬きの間であっても




 次々に姿を現すは、鬼か死神か天使か




 この こうい を善と悪どちらと捉えるか



 駆け走る


 前に向かって

 ただひたすらに







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