飛行機音がもたらす世界の終末




 やけに飛行機の音が煩かった。






 今思えば、水の上だった。


 電車が海の上を走る時。

 車がダムの周りを走る時。


 そう。深大な水が視界に入る時。


 水の中で死ぬか。

 土の中で死ぬか。

 炎の中で死ぬか。


 最悪な死に方の中で、どれが一番ましだろうと考える。


 答えは未だに出ないその中で。


 山の中。

 雪の中。

 屍の中。

 瓦礫の中。

 病の中。


 これらを思い描かなかったのはなぜか。




 では、最高の死に方は何だろうか。


 この時まで考えた事もなかった問い掛け。


 風光明媚な中。

 愛する人の中。

 趣味の中。

 誇りの中。


 当たり前に安らぎの中である。






 はは。


 辺り一面に雪景色が見たいと思い。


 渇いた笑い声が耳に届く。


 彼の人が今、概観する世界の終末はどれか。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る