掌編小説

藤泉都理

2018.6.

路地とびわ




 薄暗くてうっそうとしているそこは、秘密でお気に入りの場所。


 俯けば見えるのは、一匹の、透明感のある小さなちいさな蛇。

 仰げば見えるのは、数えきれないくらいの、手に余る橙色の雫。


 ちょろちょろちょろちょろ。


 くゆらせる蛇を跨いで。


 たわわわわ。


 惹きつける雫に手を伸ばす。


 ラスボスに見つかってはそこでおしまい。

 けれど、ゲームと違って、ラスボスは何人も居る。


 きょろきょろ、辺りを見回して、慎重に。音を立てないように。誰にも見つからないように。


 あと、もう少し。


 だったのに。


 やかましい小人に見つかってしまった。


 ラスボスではないけれど、ラスボスを呼び寄せる。


 今日はこれにてジ・エンドだ。




「いーけないんだ、いけないんだ。せーんせーに言ってやろ!」


 また買収する必要があるみたいだ。







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