桜の話

 こんにちは、顔がいい女です。

 春、桜が咲く季節。ファミレスの窓際の席で、街路樹の桜を眺めながらの彼女との会話です。

「桜ってピンクだよねー。」

 唐突に彼女が呟きました。

「何を今さら。」

「なんでピンクなんだと思う?」

「そりゃあ……ピンクになりたかったんじゃない?」

「ほら、あの、ソメイヨシノの花言葉なんだっけ。」

「……高貴、純潔、優れた美人……とか。」

「それで、桜の木の下には死体が埋まってるんでしょ?」

「……何が言いたいの?」

「高貴で優れた美人が桜の木の下には埋まっている……。」

「……美人って単語が出るとすぐこっち見るのやめてほしいんですけど。」

「なんかこう、物語を想像しちゃうよね。高貴な美人に嫉妬した人間が、殺してしまった後桜の木の下に埋めた。そのせいで白かった桜はピンクに染まった、みたいな。」

「……馬鹿馬鹿しい。桜が血を吸うわけでもあるまいし。」

「冗談を楽しめない人間はつまらないよ?」

「嫉妬された美人が殺されるって話、あまり他人事とは思えないんだよね。」

「大丈夫だって。あんたには私が居るじゃん。」

「……意味わかんないんですけど。」

 私に嫉妬する人間がどれほど居るかは分かりません。でも、何があったって彼女なら私のことを守ってくれそうな気がしました。気のせいだと思うけど。

 そんな、桜の話でした。

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