SIDE剣聖001_そっか、今度は王国、モルタヴァをぶっ壊せばいいんだ
「ずっといっしょにいてくれるっていったのに! ライのうそつき!」
妹だったテルースが死んだ時、妹の命を奪った闇ギルドに報復する事で溜飲を晴らした。
闇ギルド“泥棒の
別に帝国なんか救いたくなかった。
ただ家族を亡き者にした奴らに復讐したかっただけだ。
そうして私は、結果として救世の剣聖と呼ばれる事になった。
妹を喰らった“泥棒の
世界は平和になった。
しかしいつまた、理不尽が家族を奪いに来るかわからない。
帝国と王国の関係は日に日に悪くなるばかりで、いつ戦争が起きてもおかしくない状態だ。
明日には戦場に、私達は放り出されるかもしれない。
だからライを失いたくなかった。
家族よりもさらに強い恋人として隣に置いて、誰よりも強くなってもらいたかった。
そうすればテルースの様に、私が不在の時に殺されずに済むから。
ずっとおじいちゃんとおばあちゃんになるまで、横にいてくれると思ったから。
なのに。
どうして。
「……あなたの為に、あなたの為に、あなたの為に」
一週間、何も手がつかなかった。
散らかった部屋。
昔みたいにライがかくれんぼして、私を困らせているのかと思って、根こそぎ部屋中のものを引き出した。
気が付いたらライが本当にいなくなったと分かって、家の物を全部剣で斬り裂いていた。
もう憂さ晴らしをする敵もいない。
私のこの喪失感は、どこに向ければいいの?
「なんでみんな、わたしをひとりぼっちにするの?」
気づいたら村を飛び出していた。
途中で魔物がいたような気がしたけど、反射神経で剣が動くから覚えていない。
途中で人を斬ってしまったかもしれない。
しかし基本魔術で完全消滅させてるし、証拠も残らないからいいか。
「……王国に逃げた?」
救国の剣聖として活動していた時の情報屋から、こんな情報を引き出した。
五日ほど前に国境警備隊が、帝国から王国への国境突破を目撃したとのこと。
捕まえる事には失敗したが、どうやら姿形の特徴がライと酷似していたとのこと。
いや捕まえろよ、無能が。
でも、そうか。
王国に隠れてたんだ。
「ふふ、ふふふふふ、みーつけた」
かくれんぼは私の勝ちだ。
昔から三人でかくれんぼやって、私が鬼の時に負けたことなんてないんだから。
「でも私はもう大人だから、ちゃんとルールは守るから」
その足で私は帝都の軍部へ向かった。
王国に向ける軍を、編成してもらうために。
“泥棒の
逃げたルートを辿ると、恐らくは王国のモルタヴァに向かったという。
あそこは帝国に対する防衛箇所としての機能が設置されていた筈だ。
王国への侵略の足掛かりを提案して、あとは色々なにかすれば言う事を聞いてくれるはずだ。
大丈夫、私が愛しているのはテルースとライだけだから。
テルースが眠る村で、ライとずっと眠っていればそれでいい。
嘘を重ねても大丈夫だよ。
ちゃんと許すから。
今度は隣から離さないから。
知ってる。
嘘つかなくても、ライはずっと私の味方なんだから。王国に行ったんじゃない。連れていかれたんだ。誘拐しやがったんだ。
戻ってきて。
救国の剣聖として、邪魔なのを全部取り除いてあげるから。
あ、憂さ晴らしの相手見つかった。
「そっか、今度は王国、モルタヴァをぶっ壊せばいいんだ!」
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