第30話
[ 【βρυκόλακας -ヴリコラカス- 】30 ]
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一週間、末柄を試用してみたが、悪くない。
明るい性格ゆえ場の雰囲気は良くなるし、何より良く働く。
少しドジが多いのが玉に瑕だが。
末柄によって、このチームの名付けをする提案が為された。
議論の末、貫井さんの提案した吸血鬼を意味するギリシャ語、”ヴリコラカス”が満場一致で決定。
末柄、最近向井を捕まえてロゴマークのデザインをしているらしい。
末柄は働きながらもずっと”マスカラーダ”について調査を行っているらしく、調査の結果、マスカラーダのメンバー数人が常駐する隠れ家の一つを特定するに至ったそうだ。
今夜、その隠れ家の襲撃作戦を決行する。
メンバーは俺と貫井さん、そして末柄。
藍原は療養、向井、狩野、雪はその看護のためにロディアに残っている。
ここで少しでも情報を聞き出し、リーダー、もとい吾立の居場所を突き止めなければ。
改め、”ヴリコラカス”。初陣の時だ。
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到着したのは、廃墟となったボウリング場。
ここをメンバーが隠れ家にしているそうだ。
侵入経路は裏手の非常口。
貫井さんの能力を使用し、姿を隠して潜入する手筈になっている。
しかし足音までは消せないため、細心の注意を払わなければならないことは変わりない。
連絡手段はインカムを用いて行い、攻撃のタイミングは正確に、一斉に。
全員が、非常口手前についた。
「状況開始、作戦名”優麗なる幽霊”.....行くぞ」
「なんか特殊部隊みたいッスね~!わくわくしてきたッス!」
「あんまりはしゃぐなよ末柄。言っとくが、遊びで来てねーからな」
「わかってるッスよぉ~」
慎重に、錆びたドアノブを捻る。
長く使われていないために出る、軋む音を抑えるのがなかなか難しい。
侵入は成功。
指定されたルートを進むと、何やらガヤガヤと騒がしい声が聞こえる。
声の方向は、ボウルレーンのフロアだ。
メンバーの血魔が屯しているらしく、かなりの大勢がいるらしい。
「....貫井さん、やってくれ。透明化し分散、連中を囲って追い立てる」
「....了解しました。お二人、目を閉じて」
霧吹きに充填された貫井さんの血が振りかけられる。
そして、発動した能力により俺達の姿は完全に周囲と同化し、見えなくなる。
「しっかし数が多いな....」
「アレを使うか、久々に」
「仮面」を手中に呼び出す。
顔面が甲殻のようなピースに覆われ、紫褐色の仮面が形作られる。
同時に、蠍のようなうねった尾が多数、尾てい骨の位置から生える。
それぞれを独立させて動かせる、猛毒の針を内蔵した尾だ。
「やっぱり俺がやる。生憎、コレは一本だけじゃないんでね」
俺の本気で出せる尾の数は10本。調子が良い日は11本。
偶然だが、「蠍」には相応しい数だろう。
そして相手の人数も11人。
さらに今日は調子が良い。ギリギリ、足りる。
「....ロックオーン」
全員に一本ずつ尾の狙いを定め、触手を伸ばすかのごとく狙い射つ。
多数、突き刺さる感触が伝わる。
こんなに多く使ったのは久しい。
各々苦痛の叫びをあげ、バタバタと地面に倒れていく。
高速再生のモデルが居ようが、血を凍結させる俺の猛毒を受けてるから長くはない。
すると、倒れる血魔が一人少ない。
そこに末柄からのコール。
「─あー、聞こえてるッスか?─」
「あぁ....そういえばお前の姿が見えないが、どうした」
「─”私”なら今屋上ッスよ。ちょっと捕まってるところなんで!─」
言動に強く違和感を感じる。
何故捕まってる。そしてなぜごく普通にそれを連絡している。
「─バレるの時間の問題なんで、早めに来た方がイイッスよ!─」
「....了解」
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