第20話
[ 【βρυκόλακας -ヴリコラカス- 】20 ]
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狩野が管轄する装備開発部に立ち寄る。
本来の主力武装である”カマカゼ”のメンテナンスをしなくてはならない。
....あれから、何年か使っていないためだ。
開発室のドアを開けると、書類だらけの机に齧りついて作業をしている狩野が目に飛び込む。
「よっしゃ、できたぁぁあ!!!」
歓喜の雄叫びをあげる狩野の前方には、謎の”箱”があった。
取っ手のついた黒い長方形のその箱は、表面のあらゆる箇所に溝があり、溝からは赤い光が漏れている。
「やっぱり来たね、向井ちゃん。当ててあげようか。カマカゼのメンテだろ?」
「....そうだ」
「済ませといたさ。問題なく誰でもぶった斬れる、絶好調そのものだよ」
「....その箱は?」
「よく聞いてくれた。君んとこの久家くん、敵が霧化する能力持ちであることを情報として残してくれていたそうだね」
「............」
「....悪い、必要なことだったんだ。すまない。では、この装備の説明をしようか」
「名を....”アポカリプス”。太陽にも匹敵する熱を持つプラズマ球体を発射し、近付くもの全てをジュワッと消しちまう規格外武器だ」
そう言い、狩野はCG作成されたシミュレーション映像の流れるモニターをこちらに向ける。
モニターにはその”アポカリプス”の起動、発射、それによりもたらされる破壊の跡が映されていた。
「こいつは威力こそヤバイが、その血魔を消し去るために現存するジャンクパーツのみで無理矢理組み立てたものだ。発射は一発が限界となるだろうな」
「発射されたプラズマ球は2秒で形を崩壊させ消滅する。奴はいくら霧化できるといっても丸ごと蒸発させられるのは敵わないだろうから、こいつをブッ放して怯んだ隙に君がぶった斬ってくれ」
「....すまない。助力、感謝する」
「いいんだ。これが裏方たる僕の嗜みだよ」
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都内の何処か。薄暗い室内。冷たく立ち込める空気。
白衣を纏った男が、ケラケラと笑い、目の前に自身の指をガリガリと齧りながらだらしなく座っている青年に話しかける。
「久家くん、行けるかな?」
『殺るなら早くしろ、ノド渇いた』
「フフッ、素晴らしい。それじゃ、行こうか」
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