14.めっちゃちょろい~クラテリア~
「あまり、ティオロード殿下にまとわりつくのはやめたほうがいいんじゃないか? 殿下には、婚約者がおられるんだよ」
久しぶりにお父さんと会ったら、いきなりそんなことを言われた。誰がこの人に告げ口したんだろ、と思ったけれどまあいいや。
「ティオ様の方から、私のところにおいでくださってるんですよ? 男爵家の娘が、王子様を袖にするなんてできないじゃないですか」
「そ、それもそうだな。うん、まああんまり問題起こさないでくれよ? クラテリアや」
「分かってます、おとうさま」
「う、うん、分かってくれればいいんだ」
こんな感じで、簡単に丸め込めるんだよねえ。なんだかんだ言ってもこの人、跡取り娘の私には甘いんだから。
さっさと送り出してしまって私は、ぺろりと舌を出した。
「めっちゃちょろい。大丈夫か、ツィバネット家」
大丈夫じゃなくしてるのは私なんだろうけれど、そこらへんは当主がしっかり経営すればいいだけの話。私は娘なんだから、せいぜい親のすねをかじることにしてるんだよね。
それにしても、まとわりつくなんて言葉が悪いわね、お父さん。マジでティオ様の方が私のことを好きで好きで、一緒にいたいって来てくれてるんだもの。元平民現男爵令嬢の私にほんと、拒否権なんてないしー。
「うん、うまくいってる。さっすが私」
アルセイラ様がこんな私にヤキモチ焼いて、手駒使って私に嫌がらせしてきてるんだよねえ。そこら辺、ぜーんぶティオ様にお伝えしてるっての分からないのかなあ、婚約者の分際で。
まあ、さすがにしんどいときもあるのでそこは私、ジェイミア先生に泣きついたりもしてる。私が学園に入学するのと同時に先生も、学園の教師として着任してくれたんだよね。お父さんが何とか手を回してくれたらしいけれど、詳しいことは聞いてない。必要ないし。
「大変ですね。でも任せてください、クラテリア様。私は、あなたの味方ですから」
「はい、ありがとうございます……!」
いや、ほんとうに助かってる。元平民だとさ、貴族の幼馴染とかいないんだもん。学園に入っても孤立しちゃってもう、大変だったんだから。ティオ様が仲良くなってくれなきゃほんと、地獄だったなあ。
「それに、ボーイフレンド増えたしね!」
ティオ様以外にもジョエル様やニルディック様、それにステファン様まで仲良くしてくれて。このまま行けば私、確実にティオ様のお妃様になれると思うんだ。いくら婚約者でも、嫌がらせとか陰湿なことしてくるアルセイラ様をそのままにしとくわけには行かないだろうし。ファーブレスト王国次期国王のお妃様、ってことを考えるとさ。
「んー。ローザティア様は……ま、いいか」
ティオ様が、私たちの仲を進めるのにある意味最大の障害って言ってたっけ。ティオ様のお姉さん・ローザティア王女殿下。でもまあ、何とかなると思うんだ。そろそろ、王国領内の視察に出かけられるっていうし。
ティオ様は、学園を卒業した者たちが出席できる卒業パーティの場で私との仲を公表してくれる、みたいなことをおっしゃってた。ジョエル様たちも協力して、アルセイラ様の非道を皆にバラすんだって。そこにローザティア様、帰ってくるのが間に合えば顔を出すらしいんだけど……その前にやっちゃえば大丈夫だよね、きっと。
「服や教科書破ったり、階段から落とそうとしたアルセイラ様が悪いんですよーだ」
まあ、下手を打つとティオ様も立場危なくなるけれど、他に王家の跡継ぎいないし大丈夫だよね。
王女様に王位継承権はないって、ジェイミア先生言ってたもん。何代か前には女王様もいたって話だけど、確かその時は王子様とかがみんな死んじゃって後を継ぐ人がいなくなったから、だもの。
うんまあ、ティオ様とかには詳しいことは聞いてないけど。でも、知ってる王様って今の王様、つまりティオ様のお父さんとかその前のお祖父さんとか、だいたい男性だし。
「どうでもいいけどね。今の王様の次がティオ様なんだし」
そうして、私は意地悪なアルセイラ様を叩き出してティオ様のお妃様になるの。その舞台、卒業パーティのためにティオ様が送ってくれたドレスを試着しながら、心がウキウキする。
ジェイミア先生もきっと、喜んでくれるよね!
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