#10 今までに犯してきた過ちを白状し、懺悔しなさい

浦見「どうも、浦見みぎりです」

淀川「淀川水面です」

浦見「今回のお便りは、ラジオネーム【断罪せし者】さんから」

淀川「このラジオ聴いてるのヤバい奴ばっかりだな」

浦見「今までに犯してきた過ちを白状し、懺悔しなさい」

淀川「過ちを犯している前提かよ」

浦見「犯していないんですか?」

淀川「人間という存在そのものが大きな過ちだ」

浦見「無駄に話を広げて誤魔化さないで下さい」

淀川「そっちこそどうなんだ? 過ち、犯してないのかよ」

浦見「……お、犯していません」

淀川「動揺しすぎだろ」

浦見「し、してません」

淀川「正直に白状しろ。今なら神様も許してくれるぞ」

浦見「許してもらわなくて結構です。もし目の前に現れたら、中指を立ててやります」

淀川「止めろ。何もされてないのに」

浦見「何もしてくれなかったからですよ。心の底から求めていた時は無視してたのに、今さら現れて何のつもりだと言ってやります」

淀川「神に限らず、人生ってそんなもんだろ。何事も、取り返しがつかなくなるまで気付けない」

浦見「だからこそ、遅刻してきたヒーロー気取りの神になんか祈りません」

淀川「ヒーローか。確かに、少し似てるかもな。遅れてやってくる。誰かが傷つかないとやってこない。そして、傷ついた人間を助けてくれるとは限らない」

浦見「そんな風にしかヒーローを観れないなんて、人として終わってますね」

淀川「会った事もない神に中指立てようとしてる奴がよく言うぜ」

浦見「会った事のない相手を激しく憎悪してる人なんか、いくらでもいます」

淀川「……ああいう連中って、本人を憎悪してる訳じゃないんだろうな。そいつ自身が空想した、存在しない人間を憎んでる。つまり、自ら憎悪の対象を細かく作り込んで、憎悪を自家発電してる」

浦見「馬鹿な人達ですね。どうせ空想するなら、溺愛の対象を作ればいいのに」

淀川「現実に溺愛の対象を作れよ」

浦見「現実を憎悪している人間には無理です」

淀川「……俺、どうすればいいんだ?」

浦見「水面さんには私の理想を体現してもらう予定なので、定義上は2.5次元です」

淀川「部隊俳優と比較されるのは辛いな……」

浦見「舞台俳優と同じ土俵に立っているつもりですか? おこがましいにも程があります」

淀川「うるせぇ。そんな風に思ってねぇよ」

浦見「思っていないんですか? 技術が無いんですから、超えるくらいの気概でやってもらわないと困ります」

淀川「……努力するよ」

浦見「さて、そろそろ話を戻しましょう。水面さん、懺悔して下さい」

淀川「……お前と二人で出かける時は、ミント味のフリスクを三箱常備してる。で、隙を見つけては食べてる」

浦見「……いかがわしいですね」

淀川「う、うるせぇ。お前も言えよ」

浦見「……水面さんの写真が、携帯のアルバムに入ってます」

淀川「写真? 撮った事あったか?」

浦見「だから、その、あれですよ」

淀川「盗撮か」

浦見「人聞きの悪い事を言わないで下さい」

淀川「じゃあ何だよ」

浦見「肖像権の侵害です」

淀川「盗撮じゃねぇか」

浦見「貴方の肖像権なんて、最初からあってないようなものです」

淀川「ふざけんな」

浦見「別に良いじゃないですか。写真の四、五枚くらい」

淀川「一枚じゃねぇのかよ」

浦見「一枚撮ったら、二枚も三枚も一緒です」

淀川「それをお前が言うのは絶対に違う」

浦見「四枚も五枚も十枚も二十枚も五十枚も百枚も一緒です」

淀川「誤差の範囲が広すぎる」


浦見「冗談です。そんなに水面さんの写真ばかりあっても、邪魔で仕方ありません」

淀川「勝手に撮っておいて邪魔者あつかいするな」

浦見「仕方ないでしょう。本当に邪魔なんですから」

淀川「じゃあ消せよ」

浦見「……消せないから邪魔なんですよ」

淀川「何で?」

浦見「だ、黙って下さい。本体を消しますよ?」

淀川「怖っ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る