#5 浦見みぎりに言わなければいけないこと、ありませんか?


浦見「お疲れ様です。浦見みぎりです」

淀川「淀川水面です」


浦見「今日のお便りはラジオネーム【誰かに金を借りてた気がする】さんから」

淀川「忘れるな」


浦見「浦見みぎりに言わなければいけない事、ありませんか?」


淀川「……え?」

浦見「ほら、早く答えて下さい」

淀川「……いや、特には無いと思うけど」

浦見「へー。ふーん。そーですか」

淀川「何その物言いたげな眼差し」

浦見「別に。何でもないです」


淀川「……誕生日は、11月11日だよな?」

浦見「はい」

淀川「駄目だ。心当たりが一つもない」

浦見「罪の意識すら無いんですね。最低です」

淀川「……携帯の検索履歴、見た?」

浦見「見られると困るものを検索したんですか?」

淀川「し、してねぇよ」

浦見「怪しいですね」


淀川「ていうか、聞きたい事があるなら直接言えよ」

浦見「懺悔のチャンスを自ら手放すんですか?」

淀川「……」

浦見「もう一度だけ聞きます。私に言っておくべき事、ありませんか?」

淀川「……いつも、ありがとな」

浦見「……つ、罪を告白する前に点数稼ぎですか。狡猾ですね」

淀川「お前と出会えて、本当に良かった」

浦見「む、無駄ですよ。そんな台詞じゃ」


淀川「愛してる」


浦見「…………………………」

淀川「……おい、何か言えよ」

浦見「顔、真っ赤ですよ」

淀川「言うな。言わなきゃバレないんだから」

浦見「バレなければ良いと思ってるんですね。最低です」

淀川「だったら言わせてもらうぞ。お顔が真っ赤な浦見みぎりさんよ」

浦見「……意地悪」

淀川「お互い様だ」

浦見「貴方よりマシです」

淀川「お前には負けるよ」

浦見「馬鹿を言わないで下さい。私ほど清廉潔白な人間は他にいません」

淀川「嘘吐け」

浦見「嘘を吐く事など永遠にありません」

淀川「……言ったな?」

浦見「な、何ですか急に。気味が悪いです」

淀川「――お前は、俺に言っておくべき事、ないのか?」

浦見「………………水面さんのクセに」

淀川「どういう意味だ」

浦見「この状況を利用して、女性に恥ずかしい台詞を言わせるんですね。下衆野郎です」

淀川「う、うるせぇ」

浦見「はいはい、分かりましたよ。言ってあげます」

淀川「……」


浦見「……あ、愛してます」


淀川「……」

浦見「言わせておいて困らないで下さい」

淀川「だから、それを言うなって」

浦見「言います。全て。嘘偽りなく」

淀川「じゃあ、今自分の顔がどうなってるか、鏡で確認してリスナーに伝えろ」

浦見「……黙秘します」

淀川「卑怯だぞ」

浦見「嘘を吐かないとは言いましたが、黙秘しないとは一言も言っていません」

淀川「屁理屈だ」

浦見「うるさいです」


淀川「結局、言わなければいけない事って何だったんだ?」

浦見「特にありません。何か隠し事をしているかもしれなので、探りを入れさせていただきました」

淀川「信用ゼロだな……」

浦見「自業自得です」

淀川「……そっすね」

浦見「自らの業を死ぬまで反省して下さい」

淀川「うい」

浦見「貴方の場合は、生きている事そのものが業ですけどね」

淀川「違いない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る