#6 うどんを許すべきか?
浦見「どうも、浦見みぎりです」
淀川「淀川水面です」
浦見「今日のお便りは、ラジオネーム【テレビ大好き】さんから」
淀川「ラジオ聴け」
浦見「お二人はそば派ですか? うどん派ですか?」
淀川「知ってどうするんだよ……」
浦見「ちなみに私はそば派です」
淀川「どっちかといえば、俺もそば派かな」
浦見「対立しないと話が進まないので、仮想うどん派になって下さい」
淀川「……なぜ世の中から争いが無くならないのか、少しだけ分かった気がする」
浦見「うどんが存在するから、ですか?」
淀川「全国のうどん屋に謝れ」
浦見「うどん屋さんを貶した訳ではありません。うどん憎んで人を憎まず、ですからね」
淀川「うどんがお前に何をした?」
浦見「カレーうどんを頼んだ時、お気に入りの服にカレーを飛ばしました」
淀川「じゃあカレーを憎め」
浦見「カレーに罪はありません」
淀川「うどんにも無いだろ」
浦見「悪いのは兵器ではなく、兵器を使った人間です」
淀川「だとしたら悪いのはお前だよ」
浦見「諸悪の根源は兵器を作った人間。つまりカレーうどんを作った料理長です」
淀川「お前が注文したから作ったんだよ」
浦見「兵器を求められた時点で、作れば惨劇が生まれる事は自明の理。つまり、あの料理長は、罪の無い犠牲者を生むと分かっていながら兵器を生み出したのです」
淀川「要するに、料理長はお前の注文を無視すればよかったのか?」
浦見「その場合は私が料理長を殴ります」
淀川「料理長が不憫だよ」
浦見「お気に入りの服が汚れて悲しむ私より、料理長を優先するんですか?」
淀川「当然だろ。料理長に罪ないし」
浦見「一片の罪科も背負っていない人間など、この世に存在しません」
淀川「一片の罪悪感も背負っていない人間は沢山いるけどな」
浦見「そう。それが料理長」
淀川「違うわ」
浦見「随分と料理長に肩入れしますね」
淀川「お前から肩を抜いた分、自然と料理長に入ったんだよ」
浦見「まさかとは思いますが、料理長と浅からぬ関係でもあるんですか?」
淀川「浅い関係すらない」
浦見「浅くも深くもない関係。意味深です」
淀川「違う。ただの無関係だ」
浦見「なるほど。今からアプローチを仕掛けるつもりですか」
淀川「人の話を聞け」
浦見「言い訳なんか聞きたくありません」
淀川「言い訳じゃない。至極真っ当な釈明だ」
浦見「癪に障ります」
淀川「何がだよ」
浦見「貴方の顔です」
淀川「顔は関係ねぇだろ」
浦見「あります。男受けの良い顔ですから」
淀川「嬉しくねぇ……」
浦見「女受けは最悪です」
淀川「思っても言うな」
浦見「女受け、欲しいんですか?」
淀川「可能であれば」
浦見「……そうですか。私一人では不十分ですか」
淀川「……別にそんな事はないけど」
浦見「という事は、私一人だけを欲望の捌け口にしているんですね。四六時中、私で良からぬ妄想に耽っているんですね。獣ですね」
淀川「じゃあ何て答えれば良いんだよ……」
浦見「うどん派でごめんなさいと謝罪して下さい」
淀川「うどんこそ関係ねぇだろ」
浦見「そもそも、うどん派さえいなければ、こんな不毛な言い争いは生まれなかったんです」
淀川「俺を仮想うどん派にしたのはお前だ」
浦見「黙って下さい。うどん派に発言権はありません」
淀川「お前のせいで本当にうどん派へ寝返りそうだよ」
浦見「うどん派の完全敗北が決したので、本日の放送はここまで」
淀川「そば派の好感度は著しく下がったけどな」
浦見「……わ、私は、水面さんのそば派です」
淀川「……そば派の好感度、著しく上がったわ」
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