#3 好きな身体のパーツは?


浦見「どうも、浦見みぎりです」

淀川「淀川水面です」

浦見「という訳で、今日も張り切っていきましょう」

淀川「まず声を張れ。仮にもラジオだぞ」


浦見「最初のお便り。ラジオネーム【いずれは賢者】さんから」

淀川「つまり今は遊び人か」

浦見「好きな女性の身体のパーツを教えて下さい」

淀川「直接聞けよ」


浦見「うるさいです。早く答えて下さい」

淀川「……外見に強いこだわりは無い」

浦見「嘘です。どうせ巨乳が好きなんでしょう」

淀川「そんな事、一度も言ってないだろ」

浦見「言わなくても、目を見れば分かります」

淀川「……」

浦見「……私の見当違いだったみたいですね」

淀川「何で分かったんだよ」


浦見「貴方の浅い思考など、全てお見通しです」

淀川「じゃあ好きなパーツも言う必要なくね?」

浦見「……水面さんが嘘を吐くかどうか、試しているんです。早く言って下さい」

淀川「好きなパーツ、か……」

浦見「じ、ジロジロ見ないで下さい」

淀川「いや、だって、目の前にいるから」


浦見「目の前に女性がいたら、誰彼構わず凝視するんですね。最低です」

淀川「違うって。お前だけだよ」

浦見「私なら凝視してもいいと?」

淀川「……駄目か?」

浦見「……仕方ないから、我慢してあげます。感謝して下さい」

淀川「よっしゃ」


──数分後


浦見「………………あの」

淀川「ん?」

浦見「まだですか? もう三分くらい経ちましたよ」

淀川「まだだ。もっと観察する必要がある」

浦見「ちゃんと考えてます?」

淀川「考えてる考えてる」

浦見「目を見せて下さい」

淀川「……」

浦見「全然考えてないじゃないですか」

淀川「何で分かるんだよ……」


浦見「ちゃんとして下さい」

淀川「ご、ごめん。じっくり見るチャンスだと思って、つい」

浦見「……変態ですね」

淀川「誓って変な所は見ていないぞ」

浦見「じゃあ、どこを見ていたんですか?」

淀川「手とか、目とか、唇とか」

浦見「見てるじゃないですか」

淀川「それくらいは許せよ」


浦見「今それを許すと、いずれはどこを見られても許さなければいけなくなってしまいます」

淀川「……逆説的に、ここさえ突破すれば今後どこを見ても良いという事か?」

浦見「ち、違います。絶対にダメです。止めて下さい」

淀川「顔を隠すのは卑怯だろ」

浦見「卑猥の権化である貴方に言われたくありません」


淀川「誰が卑猥の権化だ」

浦見「存在が猥褻です」

淀川「猥褻なのは存在じゃない。思考だ」

浦見「黙って下さい」

淀川「俺を黙らせたければ拘束具を持ってこい」

浦見「忘れてるかもしれませんけど、これラジオですからね。配信中ですからね」


淀川「こんな素人の雑談、ラジオと呼んで良いのか?」

浦見「聞いている人がいないんです。文句を言う人もいません」

淀川「配信する意味ねぇ……」

浦見「水面さんの文句を聞く人もいません」

淀川「聞けよ。お前が」



浦見「最後に、確認しておきます」

淀川「確認?」

浦見「結局、好きな身体のパーツはどこですか?」

淀川「……首筋かな」

浦見「変態ですね」

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