『ゆくえ父めい』
小話:某学院の醜聞について
告呂市のある高校で、在学中の女子生徒が集団妊娠するという事件が起こった。
妊娠した者が一人二人であったならば、まだ素行の悪い生徒が「火遊び」にしくじったという、それなりによくあるヤンチャで済んだだろう。
だが、数が尋常ではなかったのだ。
――二十七人。それが、懐妊した女生徒の数だ。
それは最早風紀の乱れというレベルでは収まらず、告呂市全体を巻き込んだ大騒ぎに発展したらしい。
学校の教師の多くが辞職する運びとなり、生徒達もかなりの人数が転校。
妊娠した女生徒達もその中に含まれ、その全員が堕胎を選択し、何処かへと引っ越して行ったそうだ。
……そう、全員が、だ。
赤子とは、大体においては愛する者と創り出した結晶である。
特に学生という多感な時期に、子を孕むほどの愛を重ねた彼女達が、素直に堕胎という結論を選ぶだろうか。
そして興味深い事に、当時女生徒を問い詰めた誰もが、彼女達の父親を特定できなかったという記録がある。
気になる人が居た、恋人が居た。そう言った話はほぼ全員にあった。
しかし彼らがそれぞれの父親なのかと問われると、皆一様に否定し首を振る。
自分達は、決して誰とも逢瀬に及んだ記憶は無いと、そう話すのだ。
多くはそれを嘘だと断じたが――懐妊時期から逆算すると、時間的に異性との逢瀬が不可能である者もまた、確かに存在していた。
では、彼女達の胎に居た胎児は何だったのか?
同時期に全員が懐妊したのは偶然なのか?
逢瀬もなしに、何時、どうやって?
――彼女達は、誰に何をされたのだろう?
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