第3話

 女子棟は3階建て。女子バスケ部の部室は最上階3階の右から2番目にある。

 もし僕が犯人ならば、1階からから縄などで渡り登るということはしないだろう。あまりにもリスキーだ。


「でも変態ならそんな危険を冒しかねるわ。もっと変態になりきって頂戴」


 一蹴

 

 こう見えても真実さんは学年では常に5番以内。自他ともに認める秀才なのだ。


 しかし最近の彼女を見ていると、本当はアホなのではと思うようになってきた。



 一呼吸置いて、壁からよじ登ろうとした。


 が…


「やっぱり無理だって!怖すぎなんだけど!」


 言い忘れていたが、僕は重度の高所恐怖症だ。よくある建物の床が透けている所なんてもちろん登れない。もっと言えば螺旋階段が登れないほど重症だ。



 こんな命の保証もない検証を出来るはずがない。


「第一、階段から降りたんなら監視カメラとかがあるだろ!?例えば2階と3階の間とか…」



「「あ…」」


 同調

 

 2人の声が全く同じトーンでハモった。


 僕が言った通り2階と3階の間にはバッチリ監視カメラが設置されていた。








「んで、日にちと時間は?」


 タバコの匂いが染み付いた業務用ジャケットを羽織りながら、清掃の人は面倒くさそうにパソコンをいじった。


 職員室の隣、業務室には学校に設置された監視カメラの映像が映し出されている。基本生徒は立ち入り禁止。教職員も滅多に入らないので、先生たちの目を探りながらこっそりと入室した。


 またここは清掃員の休憩所でもあるのだ。一応校内は喫煙のはずなが、タバコの灰皿が机の奥に置かれている。


「5月24日、時刻は4から6時までの間です」


「ふんふん」


 鼻歌を歌いながら軽快にキーボードを打ち込む。ほんの数分でモニターの1つに当時の映像が映し出された。


「出来たぞ。一応早送りしてるから止めたからったら言え」


 なまりの強い口調だが、清掃員のおじさんは親切だった。軽く会釈をして、僕達は監視カメラに目を凝らした。

 真実さんもまた画面をじっと見ている。


「出てこない…」

「そうね…」


 

 特に何もおこらず、このまま終わってしまうのではということが頭をよぎった。


 しかし、時刻が5時半を回った所で自体は急展開を迎える。



「あ…!真実さん!これ見て!」


 画面に1人、階段を上り、女子バスケ部の部室がある2階へ向かう姿が映った。


「見えてるわよ!!これって…」




 そこに映っていたのは、女子バスケ部の顧問“乙木莉健おとぎりたける”先生だった。






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