第2話
案の定女子部員からは悲鳴や軽蔑の嵐を受けた僕は、沢城さんから、棟の入り口で一時待機の命令を受けた。
誰が投げたかは知らないが、飛んできたペットボトルが右頬に当たり、まだジンジンと痛む。
10分もすると女バスの部員がぞろぞろと体育館へ足を運んでいった。
皆僕のことをチラチラと横目で見て行くが、一人だけ口調の強い女子が僕に強く当たってきた。
「変なことしたら殺すわよ!」
そして彼女は、制服を盗まれた被害者の1人だ。
(多分ペットボトル投げたのもコイツだろう…)
「真実さんがいるだろう?彼女がいる限りありえないよ…」
「ホントでしょうね?急に部室に押しかけてきて…」
顔を近づけてきた。あと一歩歩けばキス出来るくらいの距離だが、その表情はメンチを切る以外の何者でもない。
鬼の形相、女子のこんな表情を見たのは初めてだ。
「ゆりちゃん…!そんなに当たると可哀想だよ…」
後ろから
黄ノ瀬とは互いに親友と呼び合うほどの仲らしい。(真実さん情報)
彼女もまた制服を盗まれた被害者の一人だ。
「ゆりちゃんがごめん!じゃ私たち行くからがんばってね!」
ニコッと笑顔を見せ、鬼灯は黄乃瀬の腕を掴み体育館へ行った。
天使か…?はたまた女神か…?
鬼灯の介入もあって、僕は黄乃瀬によるこの局面をなんとか乗り越えることができた。
彼女たちが立ち去ったのを見送り、ようやく禁断の女子専用棟に足を運ぶ。
秘密の花園、男子の知らない楽園、一体どんな景色が広がっているのだろうか…
だかそんな妄想もすぐに打ちひしがれた。
散らばった衣服、飲みかけのジュース、袋いっぱいのゴミ箱…
そこは彼女たちからは想像しかねる程、汚かった。
(ストレートな表現だが)
これが現実か…
「ようやく来たわね。その顔は秘密の花園を期待していたら、現実を知り心の底から落胆をしていると言ったところね。一体、何してたの?」
真実さんだ。
部室の奥にある窓を両手で強く開け閉めしている。
なぜ僕の真相心理を、瞬時かつ事細かに理解してしまうのか…
「ちょっとある部員に捕まって…」
「黄乃瀬ね。彼女他の男子にもあんな態度とるけど、意外と人気なのよね。やっぱ皆『M男』というやつなのかしら?」
「いやただ容姿で判断しているだけじゃない…ってM男を強調するな」
「あらそうかしら?君が1番好きそうなタイプだと思っていたのに」
「僕をM男という前提で話を進めないでくれ。あとさっきから真実さんは何してんの…」
「これは物的検証よ。入る時は鍵が閉まっていたのだから入違う入り口から入ると考えるのが妥当でしょ?この部屋で出入りが可能なのはドアと窓しかないわ」
「じゃあ普通にドアから入って出たんじゃないのかな…?」
「練習中は部員の1人が交代制で鍵の管理をしているわ。そして部活が終わるまでは部室に戻れないの。その時の女子部員がしっかり鍵を閉めたって証言しているのだから、ドアから入ったとは考え難いわ。鍵を閉めるのを見ていたという証言者もいるのだから間違いないわね」
「ほう…」
「でもこれだけだと部室に入る証拠にはならないわ。ということで君には一度外から部室に侵入出来るか試して欲しいの」
「なるほど…いやちょ、まっ…え!?」
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