第14話
「カナタさんの血を引いていれば職業を選択できる・・・のですか?」
「もちろんじゃ。」
シラネ様はアネットさんの問いかけに悠然と頷く。
オレの血を引くって、もしかしてオレから血を抜いて誰かに輸血したら、その人が職業を選択できるようになるということなのか?
えっ・・・。
それってオレ、これから狙われるんじゃないか。
ちょっと。シラネ様。
なんだってそんなヘンテコな体質にしたんだよ。
「カナタよ。なにか勘違いしておらぬか?」
血を抜かれると思って顔を真っ青にしていたオレにシラネ様はため息をこぼした。
「なにを勘違いしていると・・・。オレ、血を抜かれるんでしょ?」
「戯けたことを申すな。そのようなことはあるまい。むしろ、妾が許さぬのじゃ。」
「カナタさん・・・。」
「カナタさん、あなたって人は・・・。」
オレの発言にシラネ様はもちろん、アーモッドさんとアネットさんも深いため息をついた。
「えっ?あれ?違うの?」
もしかして、皆わかってるのにオレだけ勘違いしてた?
やべっ。恥ずかしいんだけど。
「違うのじゃ。カナタの血を引く者。つまり、カナタの眷属じゃ。」
「眷属・・・?」
シラネ様ってばまた難しい言葉を使う。
眷属ってなんだろう。
よく聞くのは吸血鬼が吸血した相手を眷属とするとか聞くよね。
えっと・・・つまり、
「オレが吸血した相手がオレの眷属になるということか?つまり、頼まれたらいろんな人の血を飲めってこと?」
オレが吸血鬼になればいいってことか?
そうして、血を吸った相手がオレの眷属となり、職業を自由に選ぶことができるということだろうか。
そう思って、オレが確認すると皆唖然とした表情を浮かべていた。
「カナタさん・・・。眷属って言葉の意味、知ってますか?」
アネットさんがオレに尋ねてくる。
「う~ん。聞いたことはあるんだけどね。よくわからないや。」
「そうでしょうね。言葉の意味を知っていたら今のようなヘンテコな質問はなかったでしょうね。」
「ぐっ・・・。」
い、以外とアーモッドさんって毒舌家なんだろうか?
「お主、アホじゃな。ほれ、三歩歩いてみぃ?」
「むっ!シラネ様!アホとは失礼なっ!」
オレはシラネ様のいう通り三歩歩いてみる。
「ほれ。1,2,3,ポカン。」
「ポカン・・・。」
ん?あれ?
オレ、今何に対して怒ってたんだっけ?
なんだか馬鹿にされていたような気が・・・。
「して、眷属とはなにか。わかるものはおるかの?」
「・・・家族ということでしょうね。」
「そうじゃ。」
シラネ様の問いかけにアーモッドさんがため息交じりに答えた。
そうか。
眷属って家族のことだったのか。
「シラネ様。難しい言葉を使わないでくださいよ。まったく。」
「・・・難しい言葉でもなんでもないと思うがのぉ。」
シラネ様が斜め上を見ながらそう呟いた。
「あの・・・。カナタさんの眷属になればってことは、私でもカナタさんと家族になれば、職業を選べるようになるのですか?」
アネットさんがそうシラネ様に尋ねた。
その表情はどこか期待をはらんでいるようにも見える。
「なんじゃお主、カナタと結婚したいのかえ?」
「け、結婚っ!!?」
「えっ!?そ、そんなこと無理です!!」
アネットさんのオレと家族になるという発言に対し、シラネ様が言った結婚という言葉にオレとアネットさんは同時に驚いた声をあげた。
っていうか、アネットさん。
オレとの結婚が無理とかってちょっとひどくないだろうか。
オレ、ちょっと傷ついちゃったかも。
「なんじゃ。カナタと結婚したいんじゃないのか・・・。」
シラネ様はそうポツリと呟いた。
「結婚は無理ですっ!カナタさんとの結婚は考えられません!」
いや、だからアネットさん。
普通にその言葉かなり痛いから。
オレの心にグサグサと刺さって痛いからやめて。
思っていても言わないで欲しいんだけど。
「アネットさん。じゃあ、家族というのは・・・?」
見かねたのか、自分も知りたかったのか、アーモッドさんがアネットさんに確認する。
うん。オレもそれ知りたい。
アネットさんの言う家族ってなんだろうか。
「えっと、カナタさんを旦那様にってのは生理的に無理なので、カナタさんを弟にしたら私も職業を選べるようになるのか知りたかったんです。」
「ぐっ・・・。」
だから、アネットさん。
オレが生理的に無理とかってそんなひどいこと言わないで・・・。
「うむ。ほれ、カナタよ。泣きそうな顔をするでない。三歩歩くのじゃ。ほれ、1、2、3、ポカン。」
「1、2、3、ポカン。」
おっと、またシラネ様の声に合わせて三歩歩いてしまった。
って、オレなにしてたんだっけ?
ま、いっか。
覚えてないんだからたいしたことはないでしょ。うん。
「さて、アネットよ。カナタの姉となっても駄目じゃ。眷属と言ってもカナタの血を引く者でなければならぬからのぉ。つまり、カナタの子供じゃ。」
「オレの・・・子供?」
「そうじゃ。カナタの子供は職業を持って産まれるが、成長し誰かに師事することで職業を自由に選択していくことができるであろう。」
「・・・そうなのね。」
「・・・なるほど。」
シラネ様の説明だと、オレの子孫は職業を選べるようになるらしい。
そう聞いてアネットさんとアーモッドさんは落胆したように肩を落とした。
だが、オレの奥さんになった人は職業はそのままということになるようだ。
「あの・・・なぜですか?なぜ、オレの子供だけ・・・?」
オレは疑問に思ったことをシラネ様に聞いてみることにした。
「うむ。良いところに気づいたの。この世界の者は必ず産まれ持っている職業がある。それは知っておるかの?」
「・・・はい、知っています。」
「もちろん。知っています。」
この世界に住む者たちはもれなく職業を持っている。
それは産まれた時から決められた職業だ。
自分で職業を選択することはできない。
それは今までシラネ様にきいたことがある。
「のぉ、アネットにアーモッド。お主たちは職業を変更したいと思ったことがないかえ?」
シラネ様が二人に確認する。
アネットさんもアーモッドさんもシラネ様の問いかけにすぐさま頷いた。
「はい。常々他の仕事もしてみたいと思っていました。でも、やってみても全然他の仕事ができないんです。どうやって仕事していいかわからないんです。」
「私も他の仕事に興味があります。今の職業が嫌いというわけではありません。好きですが、でも他の職業にも憧れがあります。」
産まれ持った適性と職業。
適性があるから、何の不自由もなくその職業に就くことができる。
だから、生きていくのは楽なんだと思っていた。
でも、アネットさんもアーモッドさんも違ったようだ。
「ふむ。今のお主らと同じ思いを持つ者がこの世界にはたくさんおるのじゃ。ゆえに、彼らは無理じゃが、これから産まれてくる子供には選択できるようにしてやろうと思ってのぉ。」
そう言ってシラネ様は目を細めて微笑んだ。
まるで、未来をその目で見ているようだ。
「な、なぜ私たちは駄目なのですかっ!?」
アネットさんがシラネ様に詰め寄る。
どうやらアネットさんは人一倍転職に興味があるらしい。
「うむ。仕方ないのじゃ。産まれたときにそうプログラムされてしまったのじゃから。今更変更はできぬのじゃ。」
「それなら、なぜカナタさんの子供だけなのでしょうか。」
アーモッドさんはそうシラネ様に問いかけた。
「一気に全ての産まれてくる子に変更をかけるのは無理なのじゃ。妾の力じゃ・・・。」
「そうそう。シラネ様はこの世界に12柱いる神様の一番格下だからね!」
「うをっ。ノエル。」
突如今まで大人しかったノエルが会話に割り込んできた。
って、この世界12柱も神様がいたのか。
「なにを言うノエル。妾は12柱いる神の中でも一番力が弱いのじゃ。」
シラネ様・・・一番力が弱いことを一番格下というのではないでしょうか。
オレは思わずそうシラネ様に向かってツッコんでしまいそうになった。
しかも、胸を張って偉そうに言うことでもないよね。
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