第18話

 エレベータは私の部屋の階に止まった。私たちはエレベータを降りて、そして私の部屋へ向かった。


 部屋はきちんと鍵が掛かっていた。私は持っていた鍵を差し込んで、解錠した。ドアを開くと、消灯されて真っ暗な廊下が続いている。すぐ近くのスイッチを押すと、明かりが点いた。


「はあ、疲れましたねえ」


 羽賀が言った。彼女は車で座りっぱなしだった。とはいえ長旅であった為、疲れたというのは分かる。運転していた私は尚更であった。


 私たちは靴を脱いで、リビングに行った。引っ越しの荷物は全て片付けられている。さすが、自慢の息子だ。


「羽賀ぁ。先シャワー入っちゃってー」

「はいーっす」


 羽賀は大きな荷物を置いた。そして風呂場へ向かった。


 私は日継の部屋に行った。彼の勉強机の引き出しを開く。すると一冊のノートがあった。表紙には調査書と書かれている。


「ほんと。自慢の息子だわ」


 ページを捲ると、彼が行った調査の過程と結果がまとめられていた。私はそれを軽く目を通しただけで、彼が行方不明になる直前までに判明した事実を把握できた。


 黒鱗村の言い伝えのこと。そしてその呪い。龍の舞殺人事件。そして龍隠し。


 龍隠しの方はほぼ解決している様だ。残りは龍の舞殺人事件と、呪いの謎である。


 呪いというのは、夫の宏が死んだ原因となる呪いだ。ノートによれば、村に長期滞在した後、村から長期間離れた人物の精神が乱れ、自殺するということらしい。


 だがどうしてそうなってしまうのか、警察ですら判明していない。果たして呪いはあるのだろうか。それとも、呪いではなくただの自然現象なのか。はたまた誰かが意図的に仕組んだ現象なのか。


「あなた……」


 私は目を瞑る。そして夫のことを思い出す。

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