第2話「ジョーカーは誰?」

「ジョーカーを殺したのはダイヤとクラブだ。ダイヤが誘導してクラブが実行した」


「それは聞き捨てならない発言だ」



黙りこくって 紙幣の勘定していたダイヤは

じっとり ひっそり 話し出す


至って冷静 全くもって慌てない

そうさ ダイヤは兄弟で 一番賢い



「何を言う! 嘘を吐く! ダイヤが提言したのだぞ!」


「はてさて、嘘つき、どちらやら。確かに、われが手段の提言をした。確かに、クラブが計画を実行した。だがしかし、計画を企てたのはスペードだ」


「ちがう! 認めない。俺はスペードだ! 俺は言葉にしただけだ。何も手出しはしていない」


「おまえは言った、殺せと言った、それだけだ。クラブはスペードに逆らえない。われは金さえあれば逆らわない。おまえが言った、殺せと言った、それだけだ。だがしかし、おまえの発言さえあれば、宇宙だって変えられる」


「そうだ! 認めてやる。俺はスペードだ! ジョーカーは兄弟面をしやがる奴! 徹頭徹尾スートよりも弱い奴! だがしかし、突然変異スートよりも強くなる! 生意気な奴。気に食わない奴」


われもあやつは気に食わない奴。おまえに金はたっぷり貰った。断る理由はまったくなかった」


「僕はこんなのいやだった、ぐすん、最後は脅され仕方なしにやったんだ、ぐすん」


「私は神に仕える者。血濡れの真似は出来ません。ですが私も犯しています、知ること出来ず、止められず、事は起きてしまうのです、供養しか出来ないのです、それが私の罪なのです」



クラブはべそかき さけんだ びゃーびゃー ばっくぎっく

スートはみんなで さけんだ ぎゃーぎゃー ばっくぎっく



「だから復讐なんだ。ジョーカーが怒ったんだ。悪霊になって殺しにきたんだ」


「馬鹿を言うな! 死者が蘇るはずがない!」


「私は祈りましょう。悲劇が二度と起きないように」


「ダイヤも何か言ってやれ! もう一度言うぞ。何か言ってやれ!」



やれやれ

手を振る

ダイヤはぎろり 睨んだぞ



われは勘定に忙しい。せいぜい焦って喚いてろ」



により にやり 笑っている

至って冷静 全くもって慌てない

そうさ ダイヤは兄弟で 一番賢い




***




夜が来た

一晩経った 夜が明けた

あの子がいなくなった


スート兄弟 顔合わせ

ダイヤは金と戯れて

クラブは1人で狼狽えて

ハートは困り眉で目を伏せる



「スペードは? スペードがいない」



最初の発言はクラブだ

口はあんぐり

目はびよよん

手はうねって泣いている



「まだ寝ているのだろう」



ダイヤは気にせず呟いた

どうしたって冷静だ



「寝ているのであれば起こさなければ」



ハートは慌てて呟いた

どうしたって心配だ

クラブは同調 ダイヤは渋々

ハートにひかれて行ったとさ



スート兄弟 スペードの部屋

ドアをノック

とんとんとん



「返事がないぞ」


「そら、もう一度」



とんとんとん



「どうした。返事がないぞ」


「めげるな。そら、もう一度」



とんとんとん



「だめだな。返事がないぞ」


「ざんねん。もう、開けてしまえ」



ドアを開けたぞ 大変だ

これはどうした 大変だ


鼻が腐るぞ 血の匂い

目が潰れるぞ 血の色彩

真っ赤だ

どろどろ

どろっと海だ


ベッドの上に彼はいたとさ

首無しスペードがいたとさ

背負っていた剣でばっさりだ



スート兄弟 何も言えまい

クラブはばたんと倒れちまった

ハートは目を閉じ冥福祈った

ダイヤは引き攣る顔で言った



「本当だったのだな。いや、なりすましも大いにある。スペードは馬鹿だった」


「なんて……言い方……するのです」


われとしてはどうでもいいのでね。あいつは傲慢でけちくさい。われとしてはせいせいするね」



ハートは何も言うまい 言えまい

倒れたクラブ 背負い いっちゃっていない

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