ジョーカー探し
世一杏奈
第1話「はじまりの手紙」
《親愛なるトランプの国のスート兄弟
これは復讐です。
貴方達を殺してスートの座を奪います。
毎夜1人ずつ会いに行きますので楽しみにしていて下さい。
5番目のスート兄弟 ジョーカー》
***
スート兄弟に手紙が届いた
いなくなったあの子から手紙が届いた
目覚めの朝だ 枕元にあった
内容は決まって同じだよ
毎夜殺す 奪う場所
送り主はジョーカーさ
青ざめる スート兄弟
唇真っ青 体はぶるり
目はギロギロ動いて落ち着かない
1番目の兄弟はスペードさ
彼は一番の権力者
横暴 傲慢 我儘放題
背には剣を背負っている
牽引力はお手の物 国の頼れる兄貴分
彼がいるから成り立つよ
スートに欠かせない存在さ
2番目の兄弟はダイヤさ
彼は一番の富豪人
怜悧狡猾 頭の回転 天下一
ポッケに紙幣常備は当たり前
経済手腕は敵わない 国の頼れる切り札だ
彼がいるから富得るよ
スートに欠かせない存在さ
3番目の兄弟はクラブさ
彼は一番の働き者
弱虫 汗垂らし 日々努力
棍棒は護身の為に欠かせない
少しばかり臆病な奴さ 国の頼れる生産者
彼がいるから生きているよ
スートに欠かせない存在さ
4番目の兄弟はハートさ
彼は一番の慈愛主
今も祈り 皆に幸福 捧げる祈り
聖杯はマストアイテムだ
過干渉は好まない 国の頼れる聖職者
彼のおかげで救われた
スートに欠かせない存在さ
スペード
ダイヤ
クラブ
ハート
彼等は兄弟さ
いつ生まれたかは昔昔で忘れたけれど
一緒に生まれたことは今も今も覚えている
彼等は兄弟さ
トランプの国に欠かせない存在さ
そうさ 手紙は4通届いたさ
違いなんてありゃしない
丸い銀製のテーブルに
スート兄弟 丸く輪になって
そっくり手紙 並べて見せ合いっこ
そっくり目玉 見つめ合いっこ
そうさ 手紙は4通届いたさ
スート兄弟は4人だもの
ジョーカーなんていないのだもの
***
弱虫クラブは震えている
小動物みたいだ がくぶるびくぶる震えている
べそかき とりはだ ばっくぎっく
「ああ。終わりだ。僕等はきっと殺される」
愛あるハートは哀れんで
クラブの背中 とんとん撫でる
我が子をあやすみたいだ とんとん宥める
「大丈夫ですよ、クラブ、大丈夫です」
傲慢スペード高笑い
げらっちょ げらっちょ 笑っている
「何を怖がる必要がある! こんなの誰かのいたずらに違いない! もう一度言うぞ。こんなの誰かのいたずらに違いない!」
スペードは言うけど クラブはとうとう泣いちゃった
べっそべっそ びっそびっそ うわーんうわーん
だってだって ジョーカーはいないもん うわーんうわーん
「本当に来たら、ぐすん、どうするんだ、ぐすん、本当に来たら殺される」
「何を言う! 来る訳ないだろう、何を言う! 兄弟は俺達だけだ。スート兄弟は4番までだ。ジョーカーなんていなんだ」
「よく手紙を見てくれよ。これは復讐、僕等への」
「それがどうした」
「復讐だ。復讐だ。もうあの事を忘れたか」
「過去のことなんか知るもんか。過去のことなんか忘れたさ」
聴いて怒るはハートだぞ
真顔でスペード諭したぞ
語り口は優しいままさ
「忘れてはいけません、スペード、忘れないでください。あれは神への冒涜です。今でも私は悔いています」
「本当に忘れた訳ではない、だけど恐れることはない! 本当にジョーカーはいないんだ。もう一度言うぞ、恐れることはない!」
「いないから怖いんだ! ジョーカーは死んだのだもの。殺されたのだもの!」
クラブはもうずっと泣いている
べっしょべっしょ びっしょびっしょ うわーんうわーん
「そうです。彼は殺された。ジョーカーが死んだのは何故ですか。神は全てを知っています」
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