第9話 中国に進出する企業のよくある勘違い

前回は「中国における合弁企業とは」と題して、中国におけるメジャーな進出形態であるジョイントベンチャーについて解説させていただきました。


今回は、どのような形態であろうとも設置するであろう董事会について日本の取締役会とどう違うのかについて明確にしておきたいと思います。


冒頭に結論を述べると≪董事会=取締役会ではない≫ということです。


とはいえ大きく違うかというとそうでもなく、構成員である董事と取締役の位置づけが異なるので中外合弁会社においては、董事会はその最高権力機構とされており、敢えて日本の株式会社の期間と比較するのであれば、取締役会と株主総会を足したような機関となるので日本の上場していない会社であればこんな感じかもしれないですね。


したがって董事会決定事項のうち、法令として明確な規定があるのは出席董事全員一致事項だけであり、その他の決議事項は定款および合弁契約に委ねられています。


だからこそ、合弁契約の作り込みは時間がかかってもしっかりと進める必要があります。


 また、総経理を頂点とする経営管理機構が決定すべき日常経営管理事項とを明確化をしておく必要があります。


例えば出資する会社が40%程度のマイノリティ出資者である場合、出資した会社がその合弁会社の経営について実質的な関与を行いたい場合には、董事会会議の定足数や決議要件、決議事項の設定は特に重要となります。


上記の例に従い、中国側当事者の董事数3名、日本側当事者の董事数2名である場合には董事会会議の開催に必ず少なくとも1名の日本側当事者が任命派遣する董事の参加が必要であると定めたり、決議事項においても全会一致決議事項や3分の2決議事項をできる限り増やし、出資した会社が合弁企業の重要決議事項の決定から排除されないように設定する必要があります。


経営管理機構に関する条項について 経営管理機構について出資した会社がマイノリティ出資者になった場合、中国側当事者が董事長の派遣を譲らないときは、日本側当事者が総経理を推薦することができると定めるほか、副総経理を推薦することができるとして、その人数を決めるだけではなく、当該副総経理の役職として会計担当であることを明記することも考えられます。


上記に加え、合弁企業設立後に財務担当者、出納担当者の任免に関する権限を保有し、法定監査に関して会計事務所の選定権限を保有するなど、会計担当副総経理の権限まで明記できれば会計担当の副総経理を財務会計の責任者として位置づけられるので不透明な経費処理の発生を防止することができるでしょう。


「中外合資経営企業法実施条例」では、総経理が重要問題を処理する際には副総経理と協議をしなければならないとされているので総経理が中国側当事者の推薦による場合、経営会議を設置することで総経理単独で決定できない仕組みを構築できます。


以上のような仕組みを合弁前に構築できれば運用上においては大きな問題はないといえます。


逆にこの辺りをしっかり認識していないと後悔することになるかもしれないので董事会構成及び経営管理機構に関する条項についてはしっかりと協議して進めて欲しいと思います。


それでは次回はいよいよ中国進出のまとめとして中国で会社設立(法人設立)するための8ステップを解説させていただきたいと思います。

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