第3話:刺客
「ブラストン、カトリーヌは無事か?」
俺の側で敵を待ち構えていた父のところに、外で迎撃指揮を執っていた祖父がやって来たが、もう大丈夫なのだろうか?
まあ、まだ外には曽祖父もいれば家老もいる、祖父がここにきてもそれほどの影響はないのだろう。
それにしても、僅か一歳の幼児に刺客を送るとは、この国の王侯貴族は血も涙もない鬼畜だな。
「はい、父上、父上のお陰でここまでたどり着く刺客は居ませんでした。
それにしても、こう度々刺客が送られてくると、家臣の補充が間に合いません。
このままではジリ貧になってしまいます」
父の言う事はもっともで、刺客が送られてくるたびに皇都駐屯の家臣が死傷する。
領地から増援を呼んではいるが、このままではいずれ腕利きの兵士を新規採用しなければいけなくなるが、そいつらの中に刺客が紛れ込む可能性もある。
俺ならば、領地に後退して持久戦に持ち込むか、いっそ戦略後退を決断して皇太子との婚約を辞退するかだ。
これは純粋に戦略戦術を検討した結果で、男と結婚するのが嫌だからではない!
「そうだな、確かにこのままやられっぱなしでは追い込まれてしまうな。
だがこれは好機でもあるのだよ、ブラストン。
敵は皇太子殿下の婚約者を殺そうとして、執拗に刺客を送って来た。
これは皇室皇国に何度も刃を向けたのと同じなのだよ。
まあ、これは御爺様から学んだ事だが、お前にも覚えてもらうぞ。
単に戦場で戦うだけが領主の仕事ではないぞ」
父が怒られているだけには聞こえず、俺まで怒られているようだ。
どうせ俺は二佐どまりの落ちこぼれ自衛官だよ。
海千山千の貴族社交界で、妖怪とまで呼ばれる曽祖父の足元にも及ばない。
魔王領主と綽名される祖父には負けないと思っていたが、着々と二代目妖怪就任に向けて地力をつけているな。
父も戦場の悪魔と呼ばれるほどの将軍だが、比較されるのが魔王や妖怪ではたいへんだな、頑張れよ親父。
「鋭意努力いたしますが、今はまず報復が先、戦場の悪魔という綽名が嘘偽りではない事、我が家に逆らった者共に思い知らせてやります」
「分かっているとは思うが、もう陣頭指揮をする立場ではないぞ。
一族一門家臣団を上手く使って、自分は絶対に安全な場所に居る。
それが貴族家当主の戦い方だ。
お前はもう十分腕前を見せつけ名を売った、次は指揮官能力を見せつけるのだ」
確かに祖父の言う通りだ、少人数の喧嘩ならば、一番強い者が先頭に立って戦うのが一番だが、戦術を駆使する騙し合いの戦場では、大将を討ち取るのが一番だ。
父にそれが理解できるだけの頭と、戦場の名声を捨てるだけの胆力があるかどうか、なければ俺は早々に最大の保護者を失ってしまうかもしれない。
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