アサシン・サイドキック

私は目を瞑った。

この日が来たんだ。

長かった。

いや、とても短かった。


私にはとても短く感じる不思議な生活だった。

この子はまだ隙を晒すこともあるが、私はもっと隙を晒している。

庇ったり、庇われたり。

助手くんはとても優秀なパートナーだった。


少し惜しい。

自分の命が惜しいのではない。

この時間が惜しいのだ。


この状態のまま語り合っていたかった。

だが彼は決断的な男だ。

私がそう育てたのだから。


BLAMN!

耳に銃声が響くと同時に、体に激痛が走った。

心臓……いや、頭部……いや。

肩だった。

この時に及んで外したのか?

バカなヤツめ。


私が振り返ると、彼は銃を取り落として泣いていた。

情所不安定なヤツだ。

まったく、さっきまで人を殺しておいて今更私一人殺せないのか。

バカなヤツめ。


「ダメだ。殺せない」

「そっか」

「まだ、師匠は殺せない」

「そっか」


そうだな。

もっと強くならないと、私を殺せないだろう。

本当は叱るべきなのかもしれないが、私は笑みを浮かべた。


◆◆◆


俺はバカだった。

まだ強くないくせに、師匠を殺すことだけを考え奮起してしまっていた。

そもそもリロードの終わってない銃を師匠に向けたり、師匠に押しのけられたりしている時点で、俺はまだ弱いんだ。

俺はまだ、師匠がいなくちゃやっていけない。

まだ俺は師匠の助手だ。


師匠は笑顔だった。

俺も思わず笑ってしまった。

何だかバカらしくて。

そして安心して。


「さあこい助手くん!君にはまだ私が必要だろう!」

「そうだ!必要だ!」


師匠が腕を広げ、どんと構え待っていた。

俺はおもわず抱き着いてしまった。


「どうやら私も、まだ君が必要のようだ。助手くん」

「そうか……」


師匠を感じながら、俺はドアの外で待ち構える黒ずくめの気配を感じ取った。

師匠は頷いていた。

どうやら師匠も気づいたようだった。


「ふふふ、気づいたか」

「ああ、気づいた」

「どうやら私達はこうやってお互いをカバーするのが向いているらしい」

「そうみてえだな……」


俺と師匠は銃を構え、頷いた。

パーティーは長く続く。

俺達の複雑な関係も。

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アサシン・サイドキック たみねた @T_G

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