第100話一級の魔物との戦い

 一通りの怪我人を治した俺達は、グラント王と共にスケルトンの大群へ向かう。


「グラント王!ゴラン殿は!?」


「あいつは国にいる!あいつは、鬼人族のくせに頭がいいからな!全体の指揮を執っている!」


「なるほど!もう1人息子がいたんでしたっけ!?」


「ライドウのことか!?あいつは駄目だ!俺以上の暴れん坊だ!今頃、適当に暴れているだろうよ!」


 おいおい、アンタ以上の暴れん坊ってどんなだよ……?

 よし!会わないようにしよう!


 そして、スケルトンの大群が見えてきた。


 鬼人族がその豪腕を持って、粉々に砕いている。

 だが、いかんせん数が多すぎて、押されている様子。


「グラント王!シノブ!フォロー頼みます!このまま中に入って、広範囲に回復魔法をかけます!」


「わかった!」


「あいさー!」


「3人は、一先ずそこで待機!」


「「「了解!!!」」」


 今は乱戦だからな……ホムラの魔法や、アテナの弓は使えない。


「オラァ!!」


 グラント王がその豪腕でもって、道を切り開いていく!


「エイヤー!」


 シノブが縦横無尽に動き回り、空白地帯を作り出す!


「2人共、助かる!では……エクストラヒーリング!」


 スケルトン達が、塵になり消えていく。


 だがその時、武器が飛んでくる!


 く!隙を突かれたか!


「団長!!」


 ガキィィン!!と音が響く。


「シノブ!助かった!だが、大丈夫か!?」


「ええ!なんとか!バルムンク!ありがとね!」


 そして、武器の正体は鉄球だった。


 そして、その持ち主は……。


「回復魔法の効き目が薄いわけだ。耐性鎧を着た、首なしデュラハンか……!」


 しかも、二体いやがる……!


 こいつらは、一級の魔物だ。


 その耐性鎧と盾より魔法系は効きづらいうえに、リーチのある鉄球、接近すれば背中の剣、物理攻撃にも強い。


 まさしく、一級に相応しい魔物だ。


「団長!狂信者達が!」


「死ねー!亜人も!それに味方する奴らも!全員死ねー!」


「ヒャハハハ!!楽しいなぁぁ!!異教徒狩りは!!」


「教皇様がおっしゃった!魔族こそが至高だと!封印されし聖典に記されていたと!」


「我等は異教徒を殺し、その功績により魔族に転生できると!」


「魔族とは至高の存在である!我々はようやく気づいたのだ!」


「朽ちない身体!永遠に生きられる能力!天地を揺るがす絶大な力!」


「人族至上主義など糞食らえだ!我々は魔族至上主義になる!」


 法衣姿にメイスを持った狂信者共が、手当たり次第に襲いかかる!


 魔族!?どういうことだ!?


 ……だが、今はそれどころじゃないか……!


「ユウマ!狂信者共は我等が!デュラハンを頼む!」


「わかりました!お任せします!」


 グラント王と入れ替わりに、仲間達が側に来る。


「俺とシノブで一体片付ける!イージス!その間、もう片方を抑えてくれ!」


「オ、オイラが一級を相手に……?」


「お前なら出来る!俺は知っている!お前が守るばかりで戦う出番が少ないのに、地道に戦いを想定した訓練をしていることを!俺達が強くなったり、強力な武器を手にしても、お前は腐らずに自分に出来る精一杯のことをしていることを!」


「だ、団長……!」


「ほら!男だろ!アタイも手伝ってやるから!」


「ワタクシもですわ!守ってもらってばかりでは、ワタクシの矜持が許しませんわ!」


「2人共……わかりました!男イージスやってみせます!」


「よく言った!それでこそ、俺が見込んだ男だ!」


「じゃあ、団長!私達の愛のパワーで、さっさと倒しちゃいましょう!」


「ちげーよ!違くないけど!宝剣以外じゃ、倒すのに時間がかかるからだよ!」


「では、いっきまーす!」


「待て!こら!俺を置いていくな!」


 シノブを追い、デュラハンに迫る!


「エイヤー!」


 鉄球とバルムンクがぶつかる!


「斬れ味随一のバルムンクでも斬れないか!」


 奴の鉄球は武器というよりは、身体の一部のようなものだからな。

 尻尾のような形で、お尻から鎖で繋がれている状態だ。


「いや!違います!私がこの子を使いこなせてないだけです!団長!時間稼いでもらえますか!?」


「わかった!任せとけ!」


 俺が接近すると、奴は剣で応戦する!


 ギイィィン!!と音が鳴り、鍔迫り合いになる!


「クッ!武器も一級品か!ミストルティンと打ち合えるとは!」


 奴が盾を前に押し出そうとしたので、一度離れる。

 そして中距離で、数合打ち合う!


 俺はその間にも、魔力を貯める!

 効きづらいなら、効くまで威力をあげればいいだけだ!


「団長!いけます!」


 シノブが始祖化状態になり、紅いオーラがバルムンクにまで伝わっている!


「よし!俺が弱らせる!後は任せた!」


 俺は、再び間合いを詰める!


 奴は盾を前にだし、それを防ごうとする。


「ミストルティン!魔力を好きなだけ持って行け!あれを切り裂く力を!」


 ミストルティンが俺に応える!


「魔斬剣!」


 いつもの斬撃を飛ばすのではなく、盾に直接叩きつける!


 ビシィ!!という音と共に、盾が砕け散る!


「まだだ!不浄なる者よ!あるべきところへ帰れ!ターンアンデット!」


 俺は奴がよろけた隙をつき、空洞の頭に手を入れ唱えた。

 そして、すぐに下がる!

 一瞬遅れて剣がくるが、もう射程外だ。

 そして、奴が苦しみだす……さすがに至近距離なら効くか。


 そして振り返ると、シノブがバルムンクを上段で構えていた。


「一刀一殺!!」


 そして気がついた時には、デュラハンの後ろにいた。

 その速さは目に追えないほどだ……!


 次の瞬間、ビシィ!!と音が鳴り、鎧が斜めに切断された。


「フゥ……お粗末でした」


「おいおい、すごいな!なんだ今のは!?」


「団長の真似をしてみましたー。似たような状態ということだったので、私にも出来るかなと思いまして」


「いや!無茶すんなよ!俺のは魔力!お前のは生命力だろうが!?」


「大丈夫ですよ!私、もう処女じゃありませんしー」


「……はぁ?それが、どういう……」


「えっと……その、団長とすると生命力補強されるというか……私、ヴァンパイアですし」


「わかった……もういい。なるほど、そういう仕組みなのか……」


「ちょっと!?アンタら!?」


 おっといけない!


「悪い!すぐ行く!」


「やっちゃいましょう!」


 俺達は、イージスの元に駆けつける。


 そこには、一級を相手に一歩も引かずに、立ち向かう勇敢な戦士がいた。


 盾と盾、剣と槍がぶつかり合い、激しい戦いを繰り広げている……!


「アテナ!どうなっている!?」


「見ての通りさ!私達が仕掛けたらこっちに向かってきたから、イージスが1人でやるって!アイツ、一対一で一級と戦えるんだぜ!?全く!いい男だよ!」


 なるほど……全身ボロボロだが、強くなったな。


「だな!だが、勝てはしないだろう。いくぞ、シノブ!」


「アイアイサー!」


「イージス!よくやった!下がれ!」


「団長!了解です!すみません、あんまりダメージ与えられなくて……」


「何を言う!十分だ!奴を見ろ!盾はボロボロ、鎧も剣も欠けている!お前のおかげで、これならもう勝ったも同然だ!」


「はい!行きますよ!バルムンク!」


「ミストルティン!バルムンクに合わせろ!」


「ハァァァァ!!!!」


「ウォォォォ!!!!」


 それぞれ色の違うオーラを纏い、デュラハンに接近する。


 そしてそのまま、交差するように、剣を振り抜く!


 バッテンの字で斬られたデュラハンは、バラバラになり生き絶えた。


 よし!これで後は、狂信者共だけだな……。


「ユウマ!」


「グラント王!どうしたのですか!?あちらを離れて平気ですか!?」


「もう、大丈夫だ!後は我々に任せろ!それよりも、重大な知らせがある!」


「……なんでしょうか?」


「いいか、よく聞け。デュラン王国の王都にヒュドラが迫っていると報告があった」


 ……どうやら、すぐに帰る必要がありそうだ。












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