第97話平和の終わり

 あの決闘から、2週間が経った。


 グラント王は2日ほど滞在し、街を見学したり、人々と触れ合ったりした。


 見た目が怖いので、最初は遠巻きから見ていた人々だが、既に仲良くなった獣人達の尽力により緩和された。


 そしてその後、オルガ殿を連れて国へ帰った。


 オルガ殿は、息子に後を任せたようだ。


 実際に、これから交流していくのはお前だからと。


 後、サユリさんについてだ。


 全面的にターレスが悪かったとはいえ、俺はサユリさんからすれば父親を殺した人間だ。


 恨み言の一つや二つは覚悟していたのだが……。


 毅然とした態度で言われてしまった。


 父が罪を重ねる前に、未然に防いでくれたことを感謝しますと。


 ユウマ様のおかげで、私も生きていられますと。


 確かに、ターレスは反乱こそしたが、誰も殺していない。


 そのおかげで、サユリさんに累が及ぶことがなかった。


 家の取り潰しと、私財没収、平民になったくらいで済んだ。


 俺に思うことがないわけではないが、表面上はこれまで通りだ。


 俺が思っていたより、強い女性のようだ。


 まあ、そのくらいでないと、叔父上には迫れないか……。


 そして、今のところは平和な日々が続いている。


 エリカとアキトは、メキメキと上達している。


 もう少しすれば、足手まといにはならないだろう。


 身体つきも、成長してきたし……あの年頃の、成長の早さは凄いな。


 イージスとアテナは、正式に付き合い始めたらしい。


 本人達は隠しているつもりだが、バレバレだった。


 ただ、あまり突っ込むと、後ろから矢か飛んでくるので、ほどほどにしている。


 カロン様とエリカも……仲が良い……複雑だけど。


 叔父上とサユリさんは、まだ進展はないようだ。


 ただ、ティルフォング家当主の干渉が無くなったので、焦ってはいないようだ。



 俺はというと……そうだな……とりあえず、ヘタレを卒業したかな。


 正式に2人と籍を入れたので……事を成した……つまりは、そういうことだ。


 え?どういうことかって?……夜を共にしたということだ……。


 色々と大変だったけどな……シノブがいざとなったら照れていたり……可愛いかったけど。


 ホムラが意外にも大胆というか……まあ、そんな感じだ。


 そんな日々を過ごしていたが、俺は感じていた。


 何故だかはわからないが、この平和にもうすぐ終わりがくることを……。




「団長!あ!ユウマさん!起きてください!」


「ん………ああ、シノブか。別に団長が呼びやすいなら、変えることないぞ?」


「うーん……どうしましょう?でも、旦那様を団長って変ですし……子供出来たら、子供に変に思われますし」


「………確かに。それは、考えてなかったな。じゃあ、ユウマさんで頼む」


「えへへー、ユ・ウ・マ・さ・ん」


「……ご機嫌なことで。というか、俺に用事じゃないのか?」


「あ!そうでした!なんか、王様からお手紙が来てますよー」


「だから!そういうことは早く言え!」


「今、言いましたよー?はい、これです」


「なになに……何だと!?シノブ!行くぞ!」


「え?どこにですかー?」


「王都にだ!セントアレイが、エデンに宣戦布告した!」


「……わかりました!メンバーは?」


「全員で行く。皆に、知らせてくれ」


「了解です!」


 皆に事情を話し、すぐに出発した。


 2日かけて、王都へ着く。


 そして王都へ着くなり、近衛に案内される。

 他の皆は、実家で休んでもらっている。

 呼ばれたのは、俺と叔父上だけだ。


 そのまま、国王様の私室に招かれる。


「ユウマ、シグルド。よく、来てくれた。先日、グラント王の使いの者がきた。既に、戦いは始まっておる。出来たらでいいので、救援を頼むと書かれておった。どうやら、セントアレイは全兵力を投入したらしい」


「では、どのように振り分けますか?」


「うむ、話が早くて助かる。シグルドを守りに残そうと思う。すまぬが……シグルド頼めるか?」


「仕方ない……任せろ。ここを狙ってくる可能性があるってことだな?」


「そういうことだ。手薄になったところを、攻めて来るやもしれん。同盟国としてもそうだが、エデンがなくなるのはまずいことだ。ユウマ、少数精鋭で向かってくれるか?」


「はい、俺は平気です」


「すまぬな……お主らばかりに、苦労をかける……」


「国王様……」


「何暗い顔してんだ!シャキッとしろや!トップがそれでどうする!」


「……そうじゃな。では、ユウマよ!人選は任せる!エデンに救援に向かってくれ!」


「は!お任せを!」


「ユウマ!お前は強い!いいか!蹴散らしてこい!」


「叔父上……はい!叔父上も頼みましたよ!ここには、母上やエリカもいるのですから!」


「おう!任せておけ!誰がこようと、ぶっ殺す!」





 俺は実家に戻りながら、考えていた。


 どうする?誰を連れて行く?

 シノブは、色々な意味で必要不可欠だ。

 ホムラも、連れて行きたいところだ。

 そうなると、護衛が必要……イージスだな。

 アテナも必要だ……アロイスは連れていけないな……。

 よし、決まりかな。


 俺は皆に伝え、すぐに出発の準備を整えた。


「母上。王命により、エデンへ行くことになりました。ろくな挨拶もできず、申し訳なく思います」


「ユウマ、もうどこから見ても立派な大人ね……。いいのよ、貴方が元気でさえいてくれれば。気をつけてね」


「母上……では、いってまいります!」




 そして関所を通ると、獣人がいた。


「ユウマ殿ですね!?救援感謝します!グラント王から伝言があります!北側からウィンドルが攻めてきたと。そちらを頼むと」


「わかりました!案内をお願いします!」


「はい!付いてきてください!」





 そのまましばらくついていくと、戦いの音が聞こえてくる。


「このまま、突っ込むぞ!」


「「「「了解!!!!」」」」


 そして見えてきた。

 ゴブリンに、ゴブリンジェネラル……三級相当のキングもいるな。

 オークの大群……二級相当のキングがいるな。

 オーガ、オーガジェネラル……キングはいないか?


「ユウマ殿!きてくれたか!」


 振り向くと、獣人族の長がいた。


「これは、オルガ殿!……我々は、どうすれば?」


「敵が多い!奥に攻め込めない!我らには、魔法が使えん!頼めるか!?」


「お任せを!ホムラ!出番だぞ!」


「ワタクシの出番ですわね!どこがいいかしら?」


「俺が右側を一掃する!お前は、左側を!オルガさん!一度下がらせてください!」


「わかった!ウォォォォ!!!!」


 その雄叫びで、獣人族が引いていく。


「ホムラ!左側だからな!味方に当てんなよ!!」


「わかっていますわ!!」


 俺は魔力を溜めながら、右側に走り出す。

 すると、ホムラの魔法が完成したようだ。


「全てを滅ぼせ!メテオラ!!」


 炎を纏った隕石が降り注ぐ!!


「よし!俺も行くか!………魔斬剣!!」


 俺の斬撃は、雑魚共を真っ二つにしていく!


 そして、轟音がする!!


 ホムラの魔法が直撃したようだ。


「おお!野郎ども!!デュラン国の助っ人がえらいもの見せたぞ!!我らも続けーー!!」


 俺達が開けた穴を、獣人達が突っ込んでいく。


 さあ、始めようか!!


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