第80話調査団の結成
次の日、俺が急いで都市に戻ろうとした時、来客があった。
「オルガ殿にエルバ殿?それに、獣人族の方々?どうしたのですか?」
「いや、デュラン国王に友好の証と、お互いに慣れるために何人か住まわせてはどうかと提案されてな。それで、偏見のない若い世代を連れてきた。デュラン国王に聞いたら、ユウマ殿は領主だと聞いてな。それなら、まずはユウマ殿が領主を務めるところが良いかと思ってな。こうして来たわけだ」
なるほど……ん?これは、色々と解決するかもしれない。
「わかりました。国王様が許可しているなら問題ありません。ですが、私は任務がありまして、都市にはいられないのですが……」
「大丈夫だ、それも聞いた。かの国王は器の大きい方だな。我等を信頼して、事情を話してくれた。ならば、こちらも信頼でもって返すのが礼儀であろう」
どうやら、任務のことやカロン様がいることも知っているということか。
ふむ……国王様の考えはわからないが、良いことかもな。
次世代の国王であるカロン様を、次世代の亜人族と交流させることは。
「なら、尚更問題ありませんね。では、早速行きましょう」
俺達は朝早く出発し、夜に都市ガンドールに到着した。
疲れたから身体に鞭を打ち、そのまま話し合いをすることにした。
ちなみに、獣人族達はまるで疲れた様子がない。
流石といったところか。
俺は皆に、国王様から受けた任務の説明をした。
「で、どうするんだ?内訳は」
叔父上が問いかけてきた。
「幸いにも、強力な助っ人が来てくれました。オルガ殿とエルバ殿に、カロン様の護衛を任せても良いですか?」
「ふむ……これは応えなくてはな」
「な、なに!?お、俺にか……?」
「ええ。貴方にです、エルバ殿。カロン様、貴方がこれから仲良くしていく方々です。ちなみに国王様から、選抜は任されました。どうでしょうか?」
「私としては、嬉しい限りです。エルバ殿、オルガ殿、こちらからお願いしてもよろしいですか?」
「任されよう」
「お、俺も頑張ります!」
そういえば、カロン様とエルバ殿は年が近いんだよな……見えん。
「そいつに任せるのか……ふむ、強いな」
「かの剣聖殿にそう言ってもらえるとは、嬉しいかぎりだな」
「では、決まりですね。イージス、アテナ。お前達がフォローをしてやってくれ」
「はい!命に代えても!」
「たく、わかったよ。アタイが全員面倒みてやんよ」
「うんうん、アテナはいい子だ。俺は安心して行けるな」
「……団長?アタイのが歳上なんだけど?」
おっと、いけない。
後ろから射られてしまうところだった。
「ちなみに、アテナはサユリさん中心でな。イージスがカロン様だ。オルガ殿、エルバ殿はその二人に従ってもらえるかな?」
「いいだろう」
「俺も、それでいい」
ひとまずは、これでよしと。
「で、ユウマ。誰がいく?生半可な奴では足手纏いだぞ?」
「それもそうなんですが、今回は修行も兼ねようかと」
「……なるほど。まあ、うってつけの場所ではあるか。過保護なお前にしては、珍しいな」
「迷ったのですけどね……なんか嫌な予感というか、戦いの予感というか……そんな感じがするので、今のうちに出来ることはしておこうかと」
「……同意見だ。俺も同じ感覚だ。では、俺から言うことはない」
「まずは、俺と叔父上。シノブとホムラ。そして、エリカとアキト。この面子で行く」
「え!?私も!?」
「え!?俺もですか!?」
「そうだ。お前達に足りないのは、戦いの経験値だ。それさえこなせば、飛躍的に伸びるだろう。実際、技量のほうは問題なくなってきたしな」
「やったーー!!」
「嬉しいです!!」
「おいおい、嬉しいのはわかるが気を抜くなよ?足手纏いには、変わりはないんだからな。今回は、叔父上がいるからな。そのおかげで、俺が回復や後衛に専念できるから、連れて行くことができるんだからな」
「叔父さん!ありがとう!」
「シグルド様!ありがとうございます!」
「……あー、まあ、仕方あるまい。ユウマ、言っておくが俺は面倒みないからな?」
「はい、叔父上は自由になさってください」
そんなこと言って、いざとなれば助けるくせにな……相変わらず、照れ屋だな。
「団長ー?私とホムラはどうしますかー??」
「お前達は、コンビで頼む。お互いに連携してくれ」
「わかりましたわ!シノブ、足を引っ張っないでくださいね?」
「ムムム、ホムラに言われたくないですよー。仕方がないので、私が守ってあげますねー」
「何ですって!?」「なんですかー??」
このやり取りも、久々に見たな。
出会った頃も、こんな風に言い合いをしていたな……懐かしい。
「ちょっと!?ユウマ!なにを笑っていますの!?」
「団長ー?ニヤニヤしてどうしましたー?」
「いや、懐かしいと思ってな。すっかり仲良くなったが、最初は酷かったからな……」
二人ともばつが悪そうに、顔を背ける。
……俺は恵まれているな……こんな良い女達が、ついてきてくれるのだから。
「じゃあ、夜も遅いのでこの辺にしときます。明日朝早く出て、出来ればバルザックに入りたいと思う。各自、準備をしといてくれ」
皆の顔を見渡し、問題がないことを確認する。
「では、解散!」
各自、それぞれ会議室から出て行く。
「お兄ちゃん」
「ん?エリカ、どうかしたか?」
「無理してない?私足手纏いじゃないかな?お兄ちゃんの負担にはなりたくない……あ、もちろんすでに負担なのはわかってるんだけど……」
「まあ、正直足手纏いだな」
「……そうだよね」
「だが、負担だとは思っていない。何度も言うが、俺がお前を負担に感じることなど有り得ない。それこそ、天地がひっくり返ろうともだ。お前は、自分がしたいようにしなさい」
「お兄ちゃん……えへへ。……私ずるいね。お兄ちゃんがそう言うのが、わかってて聞いちゃった……。なんか、最近お兄ちゃんがどっかに行っちゃう夢を見たからかな?なんだが、不安になったみたい」
「おいおい、怖いこというなよ。俺は、どこにも行かないさ。お前が呼ぶのなら、死の淵からでも蘇ってみせよう」
「もう!お兄ちゃん!冗談でもやめてよね!」
「ハハ!悪い悪い。ほら、準備をしなさい。体調管理から、すでに修行は始まっているからな?万全の状態にしとけよ?明日起きて、具合が悪かったら連れて行かないからな?」
「……言われてみれば、そうだよね。うん、わかった。お兄ちゃん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。また、明日な」
エリカも会議室から出て行く。
エリカが来た時点で、シノブは気を使い出て行った。
つまり、今は1人ということだ。
……エリカは、鋭いな。
流石は、我が愛しの妹だ。
……俺は、最近変な夢を見る。
俺ではない、誰かが話している夢を……。
そして、異常な魔力上昇。
怖いほどに洗練されてきた剣技。
……俺の身体に、なにが起こっている?
単純に喜んでいいものか……。
だが、気味が悪い……これは本当に自分の力なのか?
……駄目だな、寝よう。
エリカに、体調は万全の状態にと言った本人が、体調不良とか笑えないしな。
俺は不安や焦燥感を押し殺し、明日に備えて眠りについた。
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