第66話ハーフエルフの集落に急行せよ!
その情報は、エデンを震撼させた。
何故なら、今まで同時に攻めてくることはなかったからだ。
セントアレイは人間至上主義を掲げているが、半分はプロパガンダだとの噂。
国民の不満を、獣人族に向けているのだ。
なので、国境付近の小競り合い程度で、本格的な戦争までは発展しない。
もちろん、獣人族が強いので、国境を越えられないという理由もある。
ウィンドルも、デュラン国にこの間仕掛けたばかりなので、戦力補充がまだなはず。
何より、示し合わせたようなこのタイミング……偶然とは思えない。
「皆の者!落ち着けい!!」
グラント王が吼える!
「すぐに対策を講じる!ユウマ!早速で悪いが、同盟国として頼んでいいか!?」
「ええ、もちろんです。国王様から許可は頂いています」
まさか、好きにやれという意味で貸してもらった紋章を使うことになるとは……。
「ん?国王の許可?どういう意味だ?」
「実はですね……」
俺は国王様から有事の際には、自由にしていいと言われていることを説明した。
「なるほど!現デュラン国王は、中々大胆な人のようだ!一家臣に、全権を委ねるとは!先見の明もあるのか!」
いや、それは只の偶然だと思います。
「はは、まあ気前が良いのは確かです」
「うむ。無事にことが済んだら、会いたいものだ。ん?良い考えだな。助けてもらう側である、俺が行くのが筋だな」
「それは……まあ、いいか。では、伝えておきますね」
「よし!では、とりあえずどうすればいいか」
「………担当を分けますか?」
「なるほど。戦力の分散か……。確かに今なら、お主らがいる。ユウマの実力なら信頼に値する。任せてもよさそうだ」
「で、どちらに行きますか?」
「我等が、セントアレイに向かおう。ユウマ達は、ウィンドルを頼む。現れたのは、ハーフエルフの集落の近くらしい。奴らはそこまでの戦闘能力はないから、助けてやってくれ」
「わかりました。ですが、俺達だけだと……」
「わかっている。ゴラン!!」
「は、親父殿。私がユウマ殿についていきます」
「頼んだぞ!では、行くぞ!!戦える者は、我についてこい!!」
そう言って、グラント王は駆けていく。
そのあとを、鬼人族の若い連中が追いかけていった。
「では、ユウマ殿!私について来てください!」
「ええ、了解です!皆!行くぞ!」
俺達は馬に乗り、走り出す。
そしてゴラン殿は、本当に馬と同じ速さで走っている。
そのまま3時間ほどで、集落の側までやってくる。
既に、戦闘は始まっていた!
「ゴラン殿!指揮は俺が執ります!いいですか!?」
「ああ、任せる!!」
「では、ホムラ!まずは、集落に被害がでないように、外側に1発頼む!」
「よいですわ!見せてあげます!……地獄の業火よ、全てを焼き尽くせ!ヘルフレイム!!」
ゴブリンとオークの群れの一部に、燃え盛る炎が降り注ぐ!
相変わらず、凄い威力だ。
「イージスは、ホムラとアテナの護衛!アテナは、俺とゴラン殿の援護!ホムラは、引き続き外側を減らしてくれ!」
「「「了解!!!」」」
「ゴラン殿!俺と一緒に突っ込んでください!集落まで駆け抜けます!」
「ええ!了解です!」
俺達は、魔物達が魔法により混乱した隙を突き、その群れに突っ込んで行く!
俺は直前で馬を降り、走る!
「ゴラン殿!穴を開けます!少し下がっていてください!」
「ああ!わかった!」
俺は馬に乗りながらも、溜めていた魔力を放つ!
「斬り裂け!魔斬剣!」
俺が放った武技は、数十の魔物達を殺していく。
「ほう!見事!では、私も負けられないですね!」
ゴラン殿は群れに飛び込んで、魔物達を蹂躙する!
「はは、魔物達が紙切れのようだな……。よし!俺も行くか!」
2人で、俺が開けた穴を広げていく。
そして、集落の入り口にたどり着く。
そこには、魔法を放つセレス殿がいた。
周りには、血だらけのハーフエルフ達が倒れている。
「我が里には一歩も足を踏み入れることは許さない!全てを斬り刻め!サイクロン!」
魔物達が、空を舞いながら切り刻まれていく!
これが、エルフ本来の魔法か!
俺達は魔法の余波を避け、近づく。
「セレス殿!助太刀します!」
「む!ユウマにゴラン殿か。……今は掟がどうとか言っている場合ではないか。では、頼む!我が同胞を助けてくれ!」
「「ええ!!」」
俺とゴラン殿で、セレス殿の魔法を逃れた個体を、各個撃破していく!
その奥から奴らがやってきた!
オーガが、2体!
だが、今の俺の敵ではない!
「ゴラン殿!ここを任せます!」
「何!?いや、心配無用だな!任された!」
俺は全身に魔力を込め、走りだす!
ゴブリンやオークを一蹴しながら、オーガへ向けてさらに加速!
その勢いのまま、間合いを詰め、ミストルティンを一閃!
一体のオーガが、胴体と下半身に分かれ絶命する。
よし!ミストルティンへの、魔力伝達に慣れてきた!
その位置のままミストルティンを、振り上げる!
ゴブリンやオークの魔力を大量に吸ったミストルティンが、輝きを放つ!
「全てを斬り伏せろ!魔光斬!」
俺が打ち下ろした武技により、オーガは一刀両断される!
俺は素早く下がり、ゴラン殿のところまで戻る。
「ユウマ殿!凄い威力だ!」
「いえ!半分以上は剣のおかげですよ!」
そのまま戦い続けること数十分後、攻撃が止んできた。
そして、イージス達がやってきた。
「イージス!状況説明!」
「はい!オイラ達は、外側から魔物達を撃破していました!そして、その最中に突然オーガが現れた箇所がありました!ホムラさんが最大魔力を放って、これを撃破!すると魔物達が消えていきました!おそらく、ホムラさんの魔法に巻き込まれたのだと思います!以上です」
「わかった!ホムラ!よくやった!久々にみせてもらったが、威力も精度も上がっていたな!惚れ直した!」
「ふえ!?ま、まあ、当然ですわ!」
「プププ。ホムラの奴、照れてやんの」
「アテナさん!?」
すると、セレス殿が近づいてくる。
「ユウマ、いやユウマ殿。この度は、助力に感謝する」
「いえ。同盟を結んだので、当然のことです」
「……今更だが、我らも賛成しよう。すまなかった」
「それは、仕方のないことです。これから、よろしくお願いしますね?」
「ああ。こちらこそよろしく頼む」
俺とセレス殿は、ガッチリ握手をする。
「では、怪我人を集めてください。まとめて回復します」
「なんと……回復魔法の使い手なのか。しかも、それを亜人に……。人族にもいるのだな……わかった、集めよう」
そして、広場にハーフエルフ達が集められる。
今の魔力なら、いけそうだな。
「……ここにいる全ての者の傷を癒したまえ!エリアフルリカバリー!」
俺の身体から、未だ
お!さすがにキツイ!だが……よし、成功だ。
「おお、傷が全快していく。これが、高位回復魔法……」
「ふう、これで良しと」
「ユウマ殿、感謝する」
ハーフエルフ達も渋々だが、お礼を言ってくる。
まあ、いきなり仲良くされたら、こっちも戸惑うからな。
このくらいが、丁度いいのかもな。
さて、グラント王の方はどうなったかな?
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