第65話特級クラス

いきなり、こうなるのか……。


まあ、仕方ない。

こういうタイプは、1度やらないと気が済まない。

覚悟を決めて、やるしかあるまい。


「わかりました。俺が相手をします」


「ほう?訳も聞かずに了承するか。気に入った!よし、場所を移そう」


そう言い立ち上がったグラント王をみて、驚く。

いや、これ軽く2メートル超えてるけど!?

というか、オーガ並みの大きさがある。

なるほど、これは間違えるのも無理はない。

知らずに会えば、オーガの一種に見えるだろう。


俺達は、鬼人族が立ち並ぶ広場に着いた。


俺の仲間達は、一言も喋らない。

どうやら、覇気にあてられたようだ。

俺も、叔父上で慣れていなければ危ないところだ。


俺とグラント王は、向かい合う。


「まだ名乗ってないですね、俺の」


「いや、言わなくて良い。まずは闘おう。それからだ。お主は武器を使うがいい」


言葉を遮られた。

まずは強さを示さないことには、名乗ることすら認めないということか。


「………そうですか。わかりました、では本気でいきます!」


俺はミストルティンに魔力を込め、グラント王と距離を詰める。

グラント王は避ける気配もない。

舐めるなよ!!

ミストルティンを振りかぶり、打ちおろす!

ブシャャーーー!!という音の共に、グラント王の胸から鮮血が噴き出す!

おい!?これ、大丈夫か!?


「ククク、ハハハッッッ!!自分の血を見たのは久しぶりだ!それは宝剣の一振りだな?」


マジか……?血が溢れているのに、余裕がありそうだ……。


「ええ、魔剣ミストルティンです。ご存知で?」


「うむ、若い頃に闘ったこともある。もう死んでいるがな。では、名乗ろう。我が名はグラント。この国の王である。そして、亜人最強でもある」


どうやら、名乗りを許されたようだ。


「俺の名はユウマ-ミストル。デュラン国で伯爵を拝命しております。そうですね……貴方に解りやすく言うと、剣聖シグルドの弟子で甥にあたります」


「ほう、あの剣聖のか。どうりで、見事な剣筋である。それなら、手加減しなくて良さそうだ。では、行くぞ?死ぬなよ!!ウラァァ!!」


グラント王は、咆哮した!

すると、血が止まる!

筋肉で血を止めた!?


そしてそのまま、俺に殴り掛かってくる!!

速い!だが、直線的なんだよ!!

俺は逆袈裟斬りで迎え撃つ!


グラント王の拳と、俺のミストルティンがぶつかる!!


おい!?嘘だろ!?斬れない!

どんな頑丈な拳だよ!?


「ククク、いいぞ!良い剣圧だ!俺の拳と打ち合えるか!」


「ふざけんなよ!!どんな拳してんだよ!?」


俺達は、1度距離を取る。


そして、再び剣と拳が交差する!


クソ!確実にダメージを与えているのは、俺の方が多いはず!

なのに、勝てるイメージが湧かない!

俺はギアを上げ、一撃に威力を込める!


「ほう!?まだ上があるか!久々だ!こんなに楽しいのは!!」


「それは、どうも!!俺は、しんどいですけど!!」


どれくらい打ち合っただろうか。


ここにきて、久々に魔力が限界に近づいた。


「はぁ、はぁ……」


「ふむ、限界が近そうだな?」


「そっちは、まだ余裕ありそうですね?」


「いや、見た目ほどではない。中々に効いておる。まあ、その剣の力が大きいが」


「ええ、わかっています。まだ完全には使いこなせていないのは……」


「なら、よい。ユウマなら、いづれ使いこなせるであろう」


「はは、名前で呼んでくれましたね?少しは認めてくれました?」


「うむ。その若さでその強さなら、いづれ我をも凌駕するやもしれん」


「そうですかね?でも、ありがとうございます。自信になります」


「では、最後にお主の最強の技を叩き込んでこい。受け止めよう」


「……わかりました。ふぅ………ハァァァ!!!」


俺は残りの魔力を、ミストルティンに送る!

全部持ってけ!ミストルティン!

そして、ミストルティンが黄金に輝く!


「では、行きます!!」


「おう!きな!!」


俺は、今できる最速のスピードで、間合いを詰める!


グラント王は両手を交差し、 防御の構えのようだ。


「斬り伏せろ!魔光斬!!」


俺は、ミストルティン専用に考案した技を喰らわす!


そして、鮮血が舞う!


「グヌゥ!!」


俺がグラント王を見ると、腕が半分千切れかけていた。


「だ、大丈夫ですか!?」


「問題ない……ことはないか。久々のダメージだ。うむ、認めよう。ユウマ殿、同盟を結んで欲しい」


「いや、それよりも腕が!」


どうする?もう魔力はほぼ空だぞ?


「ん?ああ、気にするな。見てろ?……フン!!」


なんと無事な方の手で、千切れかけている腕を元の位置に戻している!


「ちょ!?待ってください!もうすぐ、回復できる魔力戻りますから!」


すると、様子がおかしい。

なんと、腕が繋がっていく。


「ふふ、驚いたか?これが、我等が最強と言われる所以の1つでもある。例え腕が千切れようと、残っていれば元に戻せる。ただ、千切れた部分を消滅されたらどうにもならんがな」


「これは、驚きました。ただ、失礼しますね。ヒール!」


「おお、温かい!これが、回復魔法というやつか!亜人に回復魔法をかける奴など、初めてみたぞ!?」


「そうなんですか?まあ、いいじゃないですか。そういう変わり者が1人くらいいても」


「……ククク、ガハハハ!!愉快だ!……人族がお主みたいな奴ばかりなら……」


「グラント王……」


「いや、お主みたいな奴がいたことを喜ぶべきだな。よし!見てたな、皆の者!この者の強さと優しさを!グラント王が宣言する!我が国エデンは、デュラン国と同盟を結ぶ!」


「「「「ウオオオオオオ!!!!」」」」


「よし!賛成と見なす!ユウマ、よろしく頼む!」


「ありがとうございます!こちらこそ、よろしくお願いします!」


そして、宴が開かれた。


結局、グラント王と酒呑み勝負になってしまった。


気が緩んだのか、真面目なルイベさんも酔っ払っている。


他の皆も、楽しそうに過ごしている。


そして夜が明け、今後についての話し合いを終えた。


これで、任務を遂行出来た。

後は、帰るだけだ。





だが、そう上手くいかないのが世の常。


帰る準備をしていた俺達に、衝撃が走る。


なんと、セントアレイとウィンドルが同時に攻めて来たという。


一体、何が起きている?

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