第67話事態は急変する

俺達はその後、ドワーフ族と獣人族の集落を訪れた。


幸い、そちらにはあまり数はこなく、撃退したとのことだった。


そして鬼人族の集落に戻ると、グラント王が血塗れで仁王立ちしていた。

どうやら、今さっき帰ってきたようだ。


「ユウマ!どうだった!?」


「ハーフエルフ達は、無事助けました。ドワーフ族と獣人族も無事でした」


「……そうか、感謝する。思いのほか手こずってな。あの狂信者どもめ!」


「でも、お怪我はなさそうですね?」


「ああ、全て返り血だ。奴らは、なんだ?いつも以上におかしかったぞ?殺しても殺しても、引やしない」


「俺は目にしたことがないので、なんとも言えませんが……」


「うむ、そうだったな。いつもならある程度殺せば、撤退するのだが……今回は、操られた人形のようだったな。味方が死んでいくのに、表情一つ変えやしない」


「なるほど、それは異常ですね。……何が、起きているんだ?」


「分からん!俺が生きてて初めてのことだ。後で、セレスに聞くしかないな」


「あ、でもセレス殿も初めてだと言っていましたよ」


「なに?ということは、少なくとも200年ほどはなかったわけか。……考えても、仕方ないか。幸い、死者は少なかったしな」


「この後は、どうしますか?」


「そうだな……やはり一度デュラン王と話をしたいと思う。 さすがに、すぐには無理だがな」


「でしょうね……。また、攻めてくるかもしれないですし。様子を見てからですね」


「ああ、そうだ。ユウマは国に帰って伝えて欲しい。落ち着いたら、会談がしたいと」


「はい、わかりました。では、その際は俺が迎えに行きましょう」


「うむ、それは助かる。我々は、初対面では怖がられてしまうからな。ユウマが来てくれるなら、色々な手間が省ける」


「では、早速ですが帰りたいと思います。我が国でも、異変があるやもしれません」


「む!それは、そうだ。我が国だけではないかもしれん。わかった、許可する。後のことは気にせずに、急いで帰るといい。ゴラン!!」


「はっ、父上。私が送ってまいります」


「ああ、頼んだぞ。お前が行けば、無駄な手続きもいらんからな」


「グラント王、ゴラン殿、ありがとうございます。では、グラント王。また、会いましょう!」


「ああ!では、達者でな!」


俺達は、急いで国境へと向かう。


すると、関所が騒がしい様子だ。


「あ!ユウマ殿!ご無事でなによりです!」


「騒がしい様子ですが、なにがありました?」


「こちらにも、魔物が少数きましたので……」


「なるほど、 ……本国は?」


「そちらにも、現れましたが……」


「どうした?何があった?」


「まだ未確認なのですが……州郡国家バルザックが滅んだと……」


「なんだと!?」


俺達に、衝撃がはしる!


「ふぅ……原因は、なんだ?」


「魔の森から、アースドラゴンの大群が押し寄せてきたと……」


「アースドラゴンだと?奴らは、竜種にしては大人しいはず……どういうことだ?」


アースドラゴンとは、竜種の一種だ。

体長8メートルほどで、群れで暮らしている。

基本的に大人しい竜種で、魔の森から出ることはない。

ただ、強さは3級ほどなので倒せないことはない。

しかしその大きさから、群れが押し寄せれば防ぐ手立てはないだろう。


「それは、まだなんとも……。とりあえず王都へ向かってください。ここでは、大した情報は得られませ

ん」


「そうだな、すまない。動揺してしまった。では、失礼する」


俺達は関所を抜け、王都へ向かう。


「ユウマ、何が起きているのでしょうか?」


「わからない……だが、とりあえず同盟を結んでおいて良かったな」


「そうですわね。先にその知らせがあったら、同盟を結ぶどころじゃなかったですものね」


俺達はそのまま、出来るだけ休まずに走り続けた。


途中でルイベ男爵の故郷で、休ませてもらった。


ルイベ男爵とは、一度そこで別れることになった。


家族が不安になっているので、残りたいと。


俺は無理もないと思い、許可した。


ただ、落ち着いたら一度俺の家を訪問すると。


俺達はルイベ男爵に別れを告げ、再び走り出す。


王都へは、行きには2日半かかったが、帰りは1日半でたどり着くことができた。


そしてイージスとアテナを、俺の家に行かせる。


俺とホムラは疲労困憊の状態だったが、そのまま王城へ向かうことにした。


そして門に着くやいなや、そのまま王の私室に招かれた。


「よく、無事に帰ってきた。とりあえずは、座ってくれ」


俺とホムラは疲れていたのもあり、大人しく座る。


「うむ、疲れているところすまんな」


「いえ、国王様こそお疲れのご様子で」


「こっちも色々あってのう……とりあえず、ユウマから頼む」


「はい。無事に同盟を結ぶことが出来ました。しかし、その直後にウィンドルとセントアレイがエデンへ攻め込んで来ました」


「ふむ、よく任務を遂行してくれた。報告は来ていたが、本当だったか……。それで、どうなった?」


「我々も救援に駆けつけ、何とか撃退することに成功しました。被害は、最小限に留めることができたかと」


「重ね重ね、よくやってくれた!同盟強化に繋がるであろう」


「ありがとうございます。それで、グラント王から伝言がありまして……」


俺は会談をしたいという、グラント王の要求を伝えた。


「なるほどのう……こちらとしては、願ってもないことである。まだまだ亜人に偏見を持つ者は多いしのう。でも、それは知らないから偏見を持つのだ。知っていけば、彼らも我らと変わらないことに気付くはず」


「おっしゃる通りかと。俺も実際に触れ、見て、感じて思いました。見た目や種族が違うだけで、大した違いはないと。特に家族を大切に思い、幸せに暮らしたいという気持ちなどは」


「そうか、良い経験をしたようだのう。まあ、その見た目が問題といえば問題になるのだが」


「……確かに、否定はできません。シノブみたいな、我々に近い見た目なら問題は起きません。ですが、鬼人族の王を見たときは、オーガに間違われるのも無理もないと思ってしまいました……」


「そう、それじゃ!」


「え?何がですか?」


「余は、ユウマに謝らねばならぬ。申し訳ない!」


「こ、国王様!?」


「お、叔父様!?」


俺とホムラは顔を見合わせて、驚く。


何故なら、


一体どういうことだ?

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